音喜多氏など一部の人が、バーナンキがノーベル賞を受賞したのは「大胆な金融緩和」が評価されたからだとか、リフレ派が正しかったからだというが、これは誤りである。ノーベル賞委員会のサイトはこう書いている。

多数の預金者が預金を引き出すために銀行に走った場合、噂は自己実現的な予言になる可能性がある。銀行の取り付けが発生し、金融システムが崩壊する。 この危険なダイナミクスは、政府が預金保険を提供し、中央銀行が銀行に対する最後の貸し手として行動して防ぐことができる。

これがDiamond-Dybvigモデルで、預金者が不安になって預金を引き出すと、銀行の残高がなくなって払い戻せなくなり、これを見てさらに多くの預金者が引き出す…という自己実現的な予言で取り付けが拡大する複数均衡の理論である。バーナンキの研究は、これを1930年代の大恐慌に応用したものだ。

バーナンキがFRB議長としてやったのも「大胆な金融緩和」ではなく、取り付けを防ぐ最後の貸し手としての資金繰り支援だった。これは金融政策としては機能せず、銀行貸し出しは減ったが、人々に一定の安心感を与え、1930年代のような取り付けの連鎖は起こらなかった。

日本では取り付けは起こらなかったので、「大胆な金融緩和」は必要なかったが、白川総裁の末期からマネタリーベースが増えた。黒田総裁の「異次元緩和」で名目GDPの50%を超え、アメリカの2倍以上になったが、何も起こらなかった。

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