正義なき世界を動かす シン地政学
冷戦時代には、世界を動かすのは自由主義と社会主義のイデオロギー対立だと思われていた。冷戦が終わったあと世界はグローバル化し、中国もロシアも自由主義圏に組み込まれると信じて軍縮が進められ、資源を浪費しても気候変動を防ぐべきだという美しい理想が語られた。

しかしウクライナ戦争で世界は変わった。いま「新しい冷戦」の世界を動かすのは暴力と資源である。これは一時的な変化ではなく、16世紀以来の世界秩序に戻る動きだ。ヨーロッパの歴史は戦争の歴史であり、20世紀後半は核兵器で戦争のコストが極大化された結果の小休止だった。それを支えていたのは、戦争を違法化し、国連が集団安全保障を維持するという原則だった。

ところが安保理事会の常任理事国であるロシアが、そのルールを破ってしまった。国際法に法の支配はないので、秩序の基盤は暴力であり、それを支えるのは資源である。人間は理想なしでも生きられるが、資源なしでは生きられない。

脱原発という理想にこだわって破滅したドイツの窮状は、「ポスト冷戦」の平和と豊かさの時代が終わったことを象徴している。世界は暴力で資源を支配する戦時経済に回帰しているのだ。

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