辻政信の真実 ~失踪60年--伝説の作戦参謀の謎を追う~(小学館新書)
大学入試を「人物重視」にしようという話がよくあるが、日本が近代化に成功した大きな原因はペーパーテストである。明治の元勲は、自分の子にその地位を世襲させなかった。伊藤博文の子も山県有朋の子も、政権には入らなかった。これは彼らが下級武士からの成り上がりで、世襲制度の不公平を実感していたからだろう。

このため帝国大学も高等文官も陸軍士官学校も、試験だけで選抜する厳格な客観テストを採用したので、人材が流動化した。特に陸士は学費が無料だったので、貧乏人の頭のいい子が入学したが、彼らは強い上昇志向と暗記力をもっていたため、日本軍の暴走する原因となった。

その失敗例が、陸軍最悪の愚将として有名な辻政信である。彼は石川県の山奥の炭焼きの子として生まれた。炭焼きは農地をもたない極貧の職業で、子供のころはガリガリにやせていたという。

だが小学校では優秀な成績だったので、教師のすすめで名古屋陸軍地方幼年学校に入学した。これは当時としては異例だったが、辻は首席で卒業した。東京の陸士も首席で卒業し、陸大は3位で卒業した。これで彼の出世は約束され、関東軍に赴任した。

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