Cages of Reason: The Rise of the Rational State in France, Japan, the United States, and Great Britain
尾身会長の記者会見で驚いたのは、政府の感染症対策を決める最高責任者が「有志の緊急提言」として会見する異様さである。日本のコロナ対策は感染症法上の特別扱い(1類相当)に依存し、それを元に膨大な省令や通達が出されているため、尾身会長がおかしいと言っても変えられないのだ。

よくも悪くもアメリカのように各州がバラバラにコロナ対策を決める国では、一種の社会実験ができるので、修正がききやすいが、日本のように国が一元的に決めると、いろいろな法律や補助金が相互補完的になり、一部だけを変えることができない。

これは大陸法より英米法の国のほうが成長率が高いというShleiferなどの実証研究とよく似ている。英米の官僚機構は分権的・専門家志向・法律家中心という点で似ており、日仏の官僚制度は中央集権・終身雇用・「組織特殊的」な技能形成などの特徴でよく似ている。

この原因は、実はアメリカの官僚機構が最古で、英国の制度はそれに追随したからだ。各州ごとに政治システムがばらばらにできたのをつなぎあわせたのが英米型で、それに追いつくために国家に権力を集中して工業化を行うシステムが日仏型だった。

この二つの均衡のどちらが最適になるかは環境に依存し、資源の少ない後発国が短期間に資源を総動員するには日仏型が向いていたが、経済が成熟してくると、英米型のモジュール的な官僚制のほうが、柔軟にシステムを組み替えられるので有利になる。

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