安倍晋三氏を殺害した犯人は、この昨年の動画を見て「安倍が統一教会の宣伝塔だ」と考えて凶行に及んだという。首相をやめて1年以上たち、本人も自由に発言したいという気持ちがあったのだろうが、誤解を招くことは確かだ。

統一教会の創立者、文鮮明は岸信介の親友であり、彼らは協力して国際勝共連合を創立した。その点では、安倍氏は祖父から受け継いだ反共の義理に忠実だっただけだろう。彼自身が統一教会の活動に加担した形跡はない。

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文鮮明と岸信介

反共は、戦後政治の最大の争点だった。平和勢力の中心だった丸山眞男は「アメリカと同じぐらいソ連や中国は信用しない」といいつつも「反共という言葉には拒否反応がある」といい、自分は「反・反共」だとのべている。それは戦前に反共という言葉が反政府勢力を弾圧するのに使われた記憶からだった。

他方、岸は「私有財産を否定する点では共産主義に共感する」といいつつ、「自由な言論を守るために共産主義には断固反対して自由主義を守る」という。奇妙なことに、丸山は自由な言論を守るために容共の立場をとったのに対して、同じ理由で岸は反共になったのだ。

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