一昔前は「地球温暖化懐疑論」というと、右派ジャーナリストの書いたあやしげな本というイメージが強かった。日本でも、人為的温暖化説には「世紀の大ウソ」だといったセンセーショナルな本が多く、相手にされていない。
本書はそういう「温暖化否定論」ではなく、気候変動の専門家がこれまでのデータをサーベイした本である。著者はカリフォルニア工科大学の副学長をつとめ、オバマ政権ではエネルギー省の科学次官に任命された。
彼がそういうデータを詳細に検討して出した結論は、「気候変動の原因も将来の影響もまだ正確にわからない」という平凡な答である。1900年以降、地球の平均気温が上がっていることは事実だが、それは人類の歴史上最高気温ではない。その原因に人間活動が関与していることは明らかだが、それが主要な原因かどうかは不明だ。
図のように人間の出す温室効果ガスが地球を温暖化する一方、大気汚染で地球を寒冷化する影響もある。差し引きすると、気候システムの中で人間活動の占める比重は1%程度で、あとの99%がちょっと変動しただけで相殺されてしまうのだ。
人間による地球温暖化と寒冷化の影響
こういう科学論争にはまだ決着がついていないのに、20年ぐらい前の誇大な被害想定を前提にし、多大なコストをかけて「脱炭素化」が進められているが、それは人類の最優先の問題とはいえない。エネルギー問題を政治利用する前に、本書のような科学的な「温暖化懐疑論」を検討すべきだ。
20世紀の海面上昇率
本書の使っているデータはIPCCとほぼ同じ査読つき論文だが、IPCCより中立に評価している。異常気象についても「ハリケーンが増えている」という印象は、大きな被害をもたらす竜巻だが、全体の数は減っている。この原因についてはIPCCも「相反する要因があるので何ともいえない」としている。
アメリカ本土の竜巻の回数(上)と大きな竜巻の数(下)
このように気候変動には不確実性が大きいので、著者が推奨するのは、莫大なコストをかけて脱炭素化で「緩和」するより、途上国のインフラ整備などの適応のほうが費用対効果がはるかに高いということだ。
この点もIPCCの第6次評価報告書の第2作業部会と同じであり、科学者のコンセンサスはそう大きくは違わないが、適応は政治的にはありふれた開発援助の問題なので、マスコミは取り上げない。
本書はそういう「温暖化否定論」ではなく、気候変動の専門家がこれまでのデータをサーベイした本である。著者はカリフォルニア工科大学の副学長をつとめ、オバマ政権ではエネルギー省の科学次官に任命された。
彼がそういうデータを詳細に検討して出した結論は、「気候変動の原因も将来の影響もまだ正確にわからない」という平凡な答である。1900年以降、地球の平均気温が上がっていることは事実だが、それは人類の歴史上最高気温ではない。その原因に人間活動が関与していることは明らかだが、それが主要な原因かどうかは不明だ。
図のように人間の出す温室効果ガスが地球を温暖化する一方、大気汚染で地球を寒冷化する影響もある。差し引きすると、気候システムの中で人間活動の占める比重は1%程度で、あとの99%がちょっと変動しただけで相殺されてしまうのだ。
人間による地球温暖化と寒冷化の影響
こういう科学論争にはまだ決着がついていないのに、20年ぐらい前の誇大な被害想定を前提にし、多大なコストをかけて「脱炭素化」が進められているが、それは人類の最優先の問題とはいえない。エネルギー問題を政治利用する前に、本書のような科学的な「温暖化懐疑論」を検討すべきだ。
脱炭素化投資の効果は不確実
IPCCの報告書もサーベイだが、その元の論文を読んだ人はほとんどいない。著者はそういう論文を検討して、IPCCより慎重な結論を出す。たとえばIPCCが疑問の余地なく予想している海面上昇についても、次の図のように上昇率が最大だったのは1930~40年であり、これは温室効果ガスとの相関がない。20世紀の海面上昇率
本書の使っているデータはIPCCとほぼ同じ査読つき論文だが、IPCCより中立に評価している。異常気象についても「ハリケーンが増えている」という印象は、大きな被害をもたらす竜巻だが、全体の数は減っている。この原因についてはIPCCも「相反する要因があるので何ともいえない」としている。
アメリカ本土の竜巻の回数(上)と大きな竜巻の数(下)
このように気候変動には不確実性が大きいので、著者が推奨するのは、莫大なコストをかけて脱炭素化で「緩和」するより、途上国のインフラ整備などの適応のほうが費用対効果がはるかに高いということだ。
この点もIPCCの第6次評価報告書の第2作業部会と同じであり、科学者のコンセンサスはそう大きくは違わないが、適応は政治的にはありふれた開発援助の問題なので、マスコミは取り上げない。