ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか (PHP新書)
ウクライナ戦争についての本はまだ少ないが、本書は戦争が始まってから書かれた本である。内容はかなり荒っぽいが、マスコミの主流とは違う。反ロシアという点では主流に近いが、アメリカの責任を重くみる点では異端派である。

著者が注目するのは、バイデン大統領の役割である。彼はオバマ政権の副大統領としてウクライナを担当し、2009年にはキエフを訪れて「ウクライナがNATOに加盟するなら、アメリカは支持する」と約束した。

この背景には、2008年のブカレスト宣言があった。このときアメリカは「ウクライナとジョージアが参加するだろう」と発表したが、実際にはドイツとフランスの反対で実現しなかった。その後もバイデンはウクライナを6回も訪問して工作を続け、息子ハンター・バイデンはウクライナのエネルギー企業の取締役になった。

2014年の「マイダン革命」では、オバマ政権はウクライナに介入して親米政権をつくった。その後も「NATOに加盟する努力義務」を憲法に書かせるなど、ウクライナの政権を実質的に支配し、軍事援助や共同軍事演習など、ロシアに対抗する方針を打ち出した。

この点ではアメリカがウクライナの政権をあやつっていたともいえるが、2021年12月にバイデン大統領は、プーチン大統領との首脳会談のあと「ウクライナで戦争が起こっても米軍は派遣しない」と、ウクライナ侵略を容認するともとれる発言をした。これはどういうことだろうか。

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