日銀が利上げしても、円安と金利上昇が止まらない。この原因は、明らかに高市政権のバラマキ財政である。インフレの中で「物価高対策」と称して財政出動する政策は岸田政権から始まったが、これは政治家の選挙対策であってマクロ経済政策ではない。

高市氏は「長期金利が名目成長率より低いときは財政赤字を増やしてもいい」という「ドーマー条件」をよく持ち出すが、これは誤用である。この点をブランシャールが、2021年に日銀で行った前川レクチャーで明快に整理している。

ドーマー条件というのは和製英語で、これはマクロ経済学では動学的非効率性と呼ばれる。これは時間を通じた資源配分がパレート効率的ではないという意味で、長期金利をr、名目成長率をgとすると、動学的効率性の定義は

 r>g

だが、何をrと考えるかで不等号の向きが変わる。Mankiwなどの有名な論文以来、多くの実証研究ではrを資本収益率と考えたので、ほとんどの先進国は動学的に効率的とされたが、政府債務を考えるときは、rは国債金利と考えたほうがいい。図のように最近の実質金利(10年物国債)は日米欧でほとんどゼロである。

スクリーンショット 2022-01-04 182514

もう一つの条件は、ゼロ金利制約があるかどうかだ。これがない場合には金融政策で総需要が調節できるが、名目金利がゼロになると金融政策がきかなくなるので、財政・金融政策の有効性について次のような3つの場合が考えられる:
  1. r>g>0:動学的に効率的
  2. g>r>0:非効率的・低金利
  3. g>r=0:非効率的・ゼロ金利制約あり
1の場合には財政赤字が民間投資をクラウディングアウトするので、緊縮財政が望ましい。政府投資の社会的収益率がrより高い場合を除いて、総需要は金融政策で調節すべきだ。これが標準的なマクロ経済学の想定している環境で、現在はそれに近づいている。

続きは12月29日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)