自民党内では、財政バラマキ派の「財政政策検討本部」と、財政タカ派の「財政健全化推進本部」が同時に立ち上がった。前者のリーダーは安倍元首相、後者のリーダーは岸田首相だが、党内情勢はバラマキ派に有利らしい。それはそうだろう。緊縮財政の好きな政治家は(与野党を問わず)どこにもいない。

日本経済がコロナの打撃から立ち直れず、成長率が年率マイナス3.7%という状況では、需給ギャップ(マイナス約5%)を埋めるべきだが、今回の10万円給付金はアドホックで、18歳以下という制限も意味不明だ。需要不足を埋めるルールを決める必要がある。バラマキより減税のほうがましだが、消費税はきわめて硬直的なので、減税すると後戻りできなくなる。

それより賃金の30%(約60兆円)にのぼる賃金税(英語ではpayroll tax)である社会保険料の増税を一時的に凍結してはどうだろうか。2023年までに5%の「増税」が予定されているが、これは約10兆円。負担は源泉徴収のサラリーマンに片寄っており、増税規模は今回の給付金(8.2兆円)より大きい。社会保険料は政令だけで変更できるので、インフレになったら止められる柔軟性がある。

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もちろんこれは今でも大きい(1000兆円以上)社会保障会計の「隠れ借金」を増やすので長期的には好ましくないが、日本のように動学的に非効率(長期金利<名目成長率)な状況では、賦課方式の社会保障は将来世代の負担にならない。オフバランスの債務(政府に返済義務がない)なので国債金利への影響も少ない、というのがBlanchard-Summersの意見である。

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