東京都の新規陽性者は5000人を超え、全国に感染が広がってきた。政府は今まで新規陽性者数を中心に判断してきた「緊急事態」(ステージ4)の基準を、重症者数や病床使用率を中心に見直すという。そうしないと1年中、緊急事態を出すことになるからだ。

もともと緊急事態とは医療の逼迫が基準で、陽性者数はその先行指標にすぎない。それがマスコミの見出しになりやすいから、「新規感染者数」ばかり騒がれるようになったが、本質的な問題は病床使用率である。ところがこの実態があやしい。

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コロナ禍検証プロジェクト調べ

これはコロナ禍検証プロジェクトの調べだが、入院患者に占める(入院の不要な)軽症以下の比率はほとんどの県で30%以上で、新潟県では80%にのぼる。神奈川県が6%と突出して低いが、これは軽症患者の一部を行政の裁量で(入院の必要な)中等症に分類している疑いがある。軽症の定義は厚労省の基準では酸素飽和度96%以上だが、医師が入院が必要だと判断したら、症状がなくても中等症に分類できるからだ。

昨年コロナが指定感染症に指定されたときは、感染症法ですべての感染者を入院させて隔離することが原則だったので、当初は軽症患者どころか、無症状者まで入院させた。このため感染症指定病院が混雑したので、5類に落とすべきだという批判が出た。

ところが厚労省は逆に(指定感染症と同等の)新型インフル等感染症に指定してしまった。「行政の裁量で軽症患者を帰宅させればいい」というのが厚労省の説明だったが、そうは行かなかった。コロナの入院費は無料なので、症状のなくなった幽霊患者が居座り、新たな重症患者の入院を締め出す。病院も補助金がもらえるため、それを帰宅させない。それが大阪で4月に起こったことである。

コロナの特別扱いが補助金詐欺を生む

さらに悪質な幽霊患者は、補助金をとって患者を受け入れない幽霊病床である。東京都は約6000の病床を確保しているが、そのうち3800程度が埋まっただけで「逼迫している」という。

この1ヶ月で毎日の陽性者数は陽性者数は1387人から4721人と3.4倍に増えたが、入院患者数は2388人から3845人と1.6倍で、8月16日をピークにしてやや減っている。これは東京都の病床管理の成果かもしれないが、全国各地で6~7割で「満床」になっている。

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厚労省は病床を新たに確保した医療機関には1床あたり最大1950万円を支給し、病床を空けておくと1床に1日最大43万6000円を補償する。総事業費は1兆円以上だ。入院要請を「正当な理由なく断らない」ことが要件だが、拒否する例があるという。医師・看護師の不足や、別の病気の患者でベッドが埋まっている場合も正当な理由に該当するためだ。

厚労省は6日付の文書で、患者を受け入れない場合は補助金の対象外として返還請求する可能性を示唆し、都が約170の重点医療機関のうち、受け入れ実績が低い施設に聞き取りしたところ、受け入れ実績が増えたという。政府は全国調査に乗り出す方針だ。

これは補助金の詐取だが、コロナで患者がいなくなって経営の成り立たない病院にとっては、コロナ補助金が唯一の収入源なので、やむをえない面もある。このような幽霊病床が増える原因は、コロナだけを特別扱い(2類相当)にしていることだ。5類に落とし、補助金ではなく診療報酬で収入を得る体制に変える必要がある。