IPCCの第6次報告書(AR6)は「1.5℃上昇の危機」を強調した2018年の特別報告書に比べると、おさえたトーンになっているが、ひとつ気になったのは右の図の「2300年までの海面上昇」の予測である。

これによると何もしないで化石燃料の消費が加速度的に増えた場合、2100年に2m近い海面上昇の可能性が「排除できない」。2300年には海面が7m上昇する低い可能性(low likelihood)があり、最大15m上昇する可能性もゼロではないという。

これは今の気温上昇が300年間続いてCO2が蓄積された場合の話で、誰も確かめることができない。そういう事態が発生するのは、地球の平均気温が氷点のような臨界点(tipping point)を超え、南極とグリーンランドの氷山が大量に溶けた場合だが、今の南極の年平均気温はマイナス10℃である。

そういう臨界点が存在するという科学的根拠はなく、大多数の科学者はその可能性を否定しているが、無視することはできない。このような(確率が低いが影響の大きい)テールリスクにどう対応すべきかについては、経済学にスタンダードな答はないが、これにふさわしい対策がある。

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