政府の「グリーン成長戦略」が発表された。その目標は菅首相の宣言した2050年カーボンニュートラルだが、世界のCO2排出量がピークアウトした現状で、限界削減費用の高い日本がこんな大規模な対策をとる必要があるのだろうか。

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IPCCとIEAのCO2排出予想(Burgess et al.)

上の図はBurgess et al.がIPCCの第5次評価報告書のシナリオとIEA(国際エネルギー機関)の予想を比較したものだが、IPCCが「何も政策対応しない場合」としているRCP8.5シナリオの最小限度をIEAの世界エネルギー見通し(WEO)は下回っている。

IEAの予想が下方修正を繰り返している最大の原因は長期停滞だ、とこの論文は指摘する。先進国の成長率は2010年代に大きく落ち込み、金利はゼロになった。エネルギー多消費型の産業が衰退し、途上国も含めて石炭の消費は2014年でピークアウトした。これがIEAの予想がはずれる原因だ。

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IEAの石炭需要予測は下方修正の連続

地球温暖化を防ぐためには成長率を下げることが効果的だ、という環境活動家の主張は正しい。そして資本主義は(彼らの運動とは無関係に)そういう「脱成長」の道をたどっているのだ。長期停滞の最大の原因は経済のデジタル化で投資が減ったことだが、それはいいことなのだろうか。

1月8日からのアゴラ経済塾デジタル資本主義の未来では、こういう問題も考えたい(申し込みは受け付け中)。