高橋洋一氏の「Eテレの電波をオークションにかけろ」という話が、いまだにネット上では話題になっているが、これは素人の与太話だ。次の表を見ればわかるように、Eテレはリモコンでは全国で2チャンネルに割り当てられているが、物理チャンネルは各地でバラバラである。

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たとえば札幌では13チャンネル、赤井川では39チャンネル、赤平では18チャンネル…というように異なる周波数に割り当てられているので、このまま売却しても通信には使えないし、買い手もいない。Eテレの合理化は、電波とは無関係なNHKの経営問題である。

問題は、このようにバラバラになっているのはなぜかということだ。これはアナログ時代には意味があった。札幌の電波が赤井川に届くと干渉(マルチパス)を起こすので、別のチャンネルを使う必要があったからだ。

しかし地デジでは、札幌と赤井川で同じチャンネルを使っても干渉は起こらない。受像機が強い電波だけ受信して、弱い電波をカットするので、北海道の中ではEテレはすべて13チャンネルで放送してもいい。これが2017年に規制改革推進会議で私が提案したSFNによる「区画整理」案である。

民放連もNHKも「技術的には可能」と認めた

それについて規制改革推進会議で民放連の林直樹氏は、技術的には可能だと認めた。
中継局を38キロ以内で置局すると、その家庭に2か所から飛んでくる電波は混信せずSFNが成立します。しかし、もっと遠くでも同じチャンネルを使っていて、38キロ超の差、正確には126マイクロ秒超の時間差で電波が飛び込んだ場合、それは完全に妨害波になってしまいます。
この妨害波の解決策は簡単である。38km以内に簡易中継局を設置すればいいのだ。これは電波を増幅するだけだから、Wi-Fiのモデムのような小さな局でよく、そのコストは微々たるものだ。これで電波を整理すれば、全国で約200MHz、約2兆円の価値のある電波をあけることができる。

今週の週刊新潮で、原英史氏と『スマホ料金はなぜ高いのか』の著者、山田明氏が対談しているが、山田氏が菅首相に本と資料を贈ったところ、首相から電話がかかってきて、「資料に書かれていることは近く実現しますよ」といわれたという。

菅

この資料には、私の規制改革推進会議の区画整理案も含まれているはずだ。もし官邸がこれを実行したら、日本の携帯電話の帯域は倍増する。

最大の問題はテレビ局だが、民放連もNHKも技術的には可能だと認めたので、あとは政治の問題である。最大の障害だった読売新聞の主筆の健康状態が最近、思わしくないことも影響するかもしれない。