絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか (日本経済新聞出版)
本書の著者ははノーベル経済学賞を受賞した開発経済学の専門家だが、第9章をベーシックインカムにあて、こう書いている。
社会政策の設計としてこれ以上のものはない、というのがユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)である。単純にしてエレガントかつ近代的な政策であり、シリコンバレーの起業家、メディア、一部の哲学者や経済学者、ちょっと変わり者の政治家の間では絶大な人気を誇る。

UBIは貧困国でも実験が行われ、インド政府は全国民に年430ドルを支給することを検討している。これはインドの基準でも低いが、財源はこれでもぎりぎりだ。ケニアでもUBIの実験が行われており、著者はそれに参加している。

先進国でも多くの実験が行われているが、労働意欲への悪影響は大きくない。UBIの最大の(そして唯一の)問題は財源である。アメリカ人全員に毎月1000ドル渡すには年間3.9兆ドル必要で、現行の社会保障予算を1.3兆ドル上回る。

この大きなギャップを埋めることは困難だが、不可能ではない。莫大な財源が必要になるのは必要のない人にも無条件に支給するからで、ユニバーサルではない条件つきベーシックインカムとしてはいろいろな方法が考えられる。

続きは10月5日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。