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警官の黒人殺害から始まった暴動は、アメリカの歴史をさかのぼり、南軍の英雄の銅像を倒し、コロンブスの銅像を破壊するに至った。彼が新大陸を発見しなければ白人がアメリカ大陸を征服することもなく、黒人が奴隷として連れて行かれることもなかったというわけだ。

奴隷制はアメリカ人の原罪であり、彼らは黒人に永遠に謝罪し続けなければならないと思っている。それが彼らが韓国人の慰安婦をめぐる作り話に弱い原因だが、植民地支配の歴史を全面否定するなら、黒人はアフリカに帰り、アメリカ大陸はすべて原住民に返還するしかない。それは偽善だが、ヨーロッパの黒歴史を見直すにはいい機会だろう。

コロンブスが到着したころ、新大陸には約3000万人が住んでいたと推定されるが、スペイン人コルテスがやってきてから50年余りで、人口は300万人に激減した。コルテスがわずか600人の軍勢でアステカ王国を滅ぼした最大の武器は、彼らの持ち込んだ天然痘だった。

もちろん意図的に感染させたわけではなく、当時ヨーロッパで天然痘が流行し、生き残った人々が免疫をもっていただけだが、インディオにとっては疫病は神罰であり、スペイン人が発病しないことは神の加護を示すものだった。アステカ王の権威は失墜し、王国はあっけなく崩壊した。

疫病は戦争と同じぐらい大きく人類の歴史に影響を与えた。7月からのアゴラ読書塾「疫病と文明」ではそういう歴史をたどり、病や死の意味を考えたい。