緊急事態宣言が「壮大な空振り」に終わった一つの原因は、西浦博氏が「日本の基本再生産数Roはそのうち2.5になる」と思い込んだことだ。日本の実効再生産数Rtは2月以降は2.5になったことはないが、彼がそう錯覚したのはRoは生物学的に決まった定数だと考えたためだろう。
そんな根拠はない。RoはSIRモデルで理論的に要請される初期値であり、現実に観測されるデータではない。万国共通になる根拠もない。こういう錯覚をまねく「再生産数」を捨て、単純に過去のトレンドを取ったほうが将来の動きが予想できるのではないか、というのがK値の発想である。
これは阪大の中野貴志氏と九大の池田陽一氏が考えたもので、彼らのプレプリントが公開されている(日本語版もある)。基準日からd日後のK(d)は、累計感染者数N(d)と7日前のN(d-7)から
K(d)=1-N(d-7)/N(d)
と計算する簡単なものだ。これは過去1週間の感染増加率で、新規感染者数の7日移動平均をとったようなものだ。Rtの動きは新規感染者数と大きくずれるが、Kの動きは次の図のように2月20日からの日本の新規感染者数の動きとよくフィットする。
これを見ると、3月10日と4月3日にピークがあることがわかる。これは武漢発の第一波とEU発の第二波だろう。そして緊急事態宣言の出た4月7日以降はずっと下がっている。これは報告日ベースだから、感染のピークは3月下旬と推定される。ここでも緊急事態宣言の効果は何もなかったことが確認できる。
続きは6月1日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)。
そんな根拠はない。RoはSIRモデルで理論的に要請される初期値であり、現実に観測されるデータではない。万国共通になる根拠もない。こういう錯覚をまねく「再生産数」を捨て、単純に過去のトレンドを取ったほうが将来の動きが予想できるのではないか、というのがK値の発想である。
これは阪大の中野貴志氏と九大の池田陽一氏が考えたもので、彼らのプレプリントが公開されている(日本語版もある)。基準日からd日後のK(d)は、累計感染者数N(d)と7日前のN(d-7)から
K(d)=1-N(d-7)/N(d)
と計算する簡単なものだ。これは過去1週間の感染増加率で、新規感染者数の7日移動平均をとったようなものだ。Rtの動きは新規感染者数と大きくずれるが、Kの動きは次の図のように2月20日からの日本の新規感染者数の動きとよくフィットする。
これを見ると、3月10日と4月3日にピークがあることがわかる。これは武漢発の第一波とEU発の第二波だろう。そして緊急事態宣言の出た4月7日以降はずっと下がっている。これは報告日ベースだから、感染のピークは3月下旬と推定される。ここでも緊急事態宣言の効果は何もなかったことが確認できる。
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