日本の新型コロナ死者が驚異的に少ない原因として私の仮説は、
  • 感染が昨年末から始まり、一部の日本人がすでにコロナの免疫をもっている
  • 日本人の感染したコロナウイルスは(BCGの自然免疫で)毒性が弱い
という二つだが、これを感染症のSIRモデルで検証してみた。これは非感染者(susceptible)、感染者(infected)、治癒者(recovered)の数を微分方程式で数値シミュレーションするもので、新型コロナについても多くのモデルがあるが、米山隆一氏が公開しているシミュレーターが便利だ。次の図は米山氏のシミュレーターで基本再生産数を2.5として感染者数の動きを見たものだ。

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感染者数(右軸・万人)と治癒者数(左軸・万人)の推移

感染開始から104日後に(累積)感染者数が2930万人でピークを打ち、治癒者(免疫をもっている人)が4679万人になる。このとき致死率0.001%とすると、死者は46人になる。感染開始が昨年末だとすると、今がこの状態である。最終的には約1億1000万人が免疫をもつ集団免疫状態で安定する。

このモデルの特徴は、致死率を非常に低く設定したことだ(2009年の新型インフルぐらい)。これはBCG接種による「自然免疫」ができているため、感染によるダメージが少ないと仮定した(そう考えないと異常に少ない死亡率は説明できない)。SIRモデルは単純なモデルなので、これで十分説明できるとは思えないが、仮説は明確になった。

ゆるやかに感染すると感染期間が長くなる

ただこのモデルは、100日で3000万人も感染するという想定が非現実的にみえるので、もう少しゆっくり感染が進むと考え、R0を1.5として計算すると、次の図のようになる。

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R0=1.5のシミュレーション

これだと240日後に感染者数は772万人でピークアウトするが、カーブがなだらかなので感染は年末まで続く。致死率を同じく0.001%と仮定すると、ピーク時の死者は32人だが、全体としてはほぼ同じだ。

これが日本のクラスター対策のイメージだと思うが、それは死者を減らすのではなく、感染を先送りするだけだから、カーブの下の面積(積分値)はあまり変わらない。集団免疫率は一定なので、それに達するまで感染は続くのだ。

この仮説をとるにしても、重要なのは感染の起点をどこに置くかである。起点が昨年12月(日本でインフルエンザが流行し始めたころ)だとすると、5月末がピークになる。R0=2.5だとすると、感染は2月末に終わったことになる。

本来のR0は2.5で、それを一時的に1.5に抑え込んでいるとすると、気をゆるめるとR0が上がって「感染爆発」が起こる。これが専門家会議の警戒している流れだろう。

ただどう計算しても、今の70人という死者は、常識的なパラメータ設定からは出てこない。致死率が0.001%というのは、日本人の国民性とか生活習慣では説明できない。もっと生物学的な要因があるはずだ。それがBCG仮説である。