地球温暖化については、いまだに論争が続いている。科学的データはIPCC第5次評価報告書にあるが、これは読みにくいので、よくある疑問を一問一答形式で整理しよう。

1.温暖化は中世にも起こったのではないか?

これについては多くの研究があるが、次の図のように西暦1000年ごろの北半球の気温が20世紀後半と同じぐらいだったことは共通している。その最大の原因はCO2ではなく、太陽の活動が活発で雲が少なかったためと推定されている。

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中世温暖期(Wikipedia)

2.CO2濃度の上昇は温暖化の原因ではなく結果ではないか?

過去40万年の長期の周期をみると、次の図のように温暖化の後にCO2が増えている。氷河期の終わる原因は地球の公転軌道の変化だが、それによる温暖化で海水から出るCO2が増えると、その温室効果で大気の温暖化が促進されるフィードバックが起こる。

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CO2濃度と平均気温

3.太陽の活動の影響ではないか?

太陽の放射照度は次の図のように、1980年代から低下している。全体として自然要因は寒冷化の方向に変化しており、それを人間の活動が逆転させているというのがIPCCの説明である。

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太陽活動と平均気温

4.宇宙線の変化が原因ではないか?

太陽の磁場が強まると宇宙線がそれに吸収されて減り、宇宙線によってできる低層雲が減って温暖化するという説がIPCCでも取り上げられたが、次の図のように、これも80年代から相関が崩れている(宇宙線が増えて温暖化した)。

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宇宙線(逆スケール)と平均気温

5.温暖化は都市化による局地的な現象ではないか?

都市化によるヒートアイランド現象は明らかで、東京の平均気温はこの100年に3℃上がったが、そのうち地球温暖化は0.74℃と推定されている。


ヒートアイランド現象(産総研調べ)
6.異常気象は増えていない?

異常気象が増えているかどうかについては決着がついていないが、NOAAのデータによると。大西洋の熱帯低気圧は増えている。

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大西洋の熱帯低気圧の頻度

7.水蒸気が最大の温暖化ガスではないか?

大気中のCO2濃度は0.04%。体積あたりの温室効果も水はCO2の2.5倍なので、水蒸気が最大の温室効果ガスだが、その量は温度によって変動する。蒸発によって大気中に散乱し、大気中の水分が増えると凝縮して雨や雪として降り、水分が大気から抜けると、海面から水が蒸発して水蒸気量を普通のレベルまで戻す。

この平衡状態に、外部から注入されるCO2が影響を及ぼす。CO2の温室効果で水温が上がると水蒸気が増え、それが熱を吸収して温室効果を増幅するフィードバック効果がある。CO2濃度が2倍になると気温は1℃上がるが、地球の平均気温は3℃ぐらい上がる。

8.地球温暖化は健康にいいのではないか?

温暖化によって凍死者は減ると予想される。特に高齢者では死者が減るだろうが、高齢者は暑さにも弱い。Lancetに掲載された論文によれば、2000~2019年に温暖化で毎年11.6万人死者が増えたが、寒冷化は28.3万人減り、差し引き16.6万人死者が減った。

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地球温暖化で減った寒さの死者と増えた暑さの死者(Lomborg)

9.温暖化は農作物にプラスではないか?

CO2は植物の生長に不可だが、安定した水の供給も必要だ。洪水や干ばつで農業生産は低下する。寒冷地(たとえばシベリア)は地球温暖化で生産性が高まると思われていたが、北極周辺の土は非常にやせており、夏に地面に届く日光は地軸の傾きによって決まるので大きく変わらない。

10.地球は氷河期に向かっている?

太陽活動は1950年ごろから低下しており、これが「氷河期が来る」といわれた原因だった。IPCCも他の実証研究も、地球の気温が自然によって決まるという事実は否定していない。特に太陽活動の影響は大きいが、現在の温暖化は3の図のように太陽活動の低下にもかかわらず起こっているので、人為的温暖化の疑いが強い。