20世紀前半を代表する経済学者がケインズだとすれば、20世紀後半を代表するのはミルトン・フリードマンだろう。しかし彼の金融理論には、致命的な弱点があった。古典的な貨幣数量説は、
MV=PY
という式であらわされる(Mは貨幣量、Vは流通速度、Pは物価水準、YはGDP)。フリードマンはこれに依拠して「Mの増加率を一定に保てば物価は安定する」と主張した。これが有名な「k%ルール」だが、政策としては失敗した。
その原因は単純である。中央銀行は「貨幣量」をコントロールできないからだ。Mを中銀の供給するマネタリーベースと考えると、Vが大きく変動するので貨幣数量説は成立しない。Mを市中に流通するマネーストックと考えると、これは民間の信用創造で決まるので中銀が直接コントロールできない。
しかしフリードマンは「マネーサプライ」という曖昧な言葉を使い、その意味を状況によって使いわけた。これがマネタリスト論争の混乱した原因だが、日本のリフレ論争はその戯画である。本書は晩年のフリードマンがリフレ派を応援していたというが、その結果は明らかだ。Mを増やしてもV(信用乗数)が大きく下がったので、量的緩和はきかなかったのだ。

信用乗数の変化(三井住友アセットマネジメント調べ)
続きは12月2日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで。
MV=PY
という式であらわされる(Mは貨幣量、Vは流通速度、Pは物価水準、YはGDP)。フリードマンはこれに依拠して「Mの増加率を一定に保てば物価は安定する」と主張した。これが有名な「k%ルール」だが、政策としては失敗した。
その原因は単純である。中央銀行は「貨幣量」をコントロールできないからだ。Mを中銀の供給するマネタリーベースと考えると、Vが大きく変動するので貨幣数量説は成立しない。Mを市中に流通するマネーストックと考えると、これは民間の信用創造で決まるので中銀が直接コントロールできない。
しかしフリードマンは「マネーサプライ」という曖昧な言葉を使い、その意味を状況によって使いわけた。これがマネタリスト論争の混乱した原因だが、日本のリフレ論争はその戯画である。本書は晩年のフリードマンがリフレ派を応援していたというが、その結果は明らかだ。Mを増やしてもV(信用乗数)が大きく下がったので、量的緩和はきかなかったのだ。

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