社会保障はネズミ講だというと「不道徳だ」とか「いずれ行き詰まる」という批判が来るが、あなたもネズミ講に入っている。買い物で払う1万円札は、製造原価20円の紙切れだ。不換紙幣は金とのリンクが切れているので、店が受け取りを拒否すると行き詰まる。不換紙幣は、取引相手に政府債務のリスクを先送りするネズミ講なのだ。
それを最初に指摘したのはマルクスである。彼は『資本論』で「商品の物神性」を明らかにし、貨幣の価値の根底に資本主義の本質的な不安定性があると書いたが、彼が貨幣を廃止しようと考えたのは間違いだった。資金需要と供給の一致しない(動学的に非効率な)世界では、人々が紙幣を使うことで資金が循環し、物々交換の世界より豊かになるのだ。
しかし貨幣の不安定性が恐慌(景気循環)の原因になると考えたマルクスの恐慌論は、今も本質的な洞察である。貨幣はみんながその価値を信じるから自分も信じるバブルなので、ジンバブエのようにみんなが政権を信じなくなるとバブルが崩壊し、ハイパーインフレが起こる。しかし日本のように政府が過剰に信頼されていると金利がマイナスになり、将来世代から借金しても将来世代の負担が増えないフリーランチが可能になる。
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