6年前、安倍首相が「輪転機をぐるぐる回して日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」と宣言したとき、多くの経済学者は嘲笑した。そんなことをしたらハイパーインフレになって財政が破綻する、というのが経済学の常識だからである。しかし最近は状況が変わってきた、とEconomistは指摘している。

日銀は「輪転機ぐるぐる」で資産を激増させたが、インフレは起こらず、長期金利はゼロに近づいている。もしこの状況が永遠に続くとすれば、増税は必要ない。政府支出を増やして中央銀行が国債を買えば、子会社が親会社の社債を買うようなもので、統合政府のバランスシートで考えると問題ない――そう主張するのがMMT(Modern Monetary Theory)である。

これは日本でいうと財政バラマキを求めるネトウヨに近いが、アメリカではバーニー・サンダースなどの民主党左派に支持されている。「政府がすべての人の最低所得を保障し、財源が足りなければ紙幣を印刷すればいい」というわけだ。そんなことをしたらハイパーインフレになるという批判に対して、彼らは「インフレになったら印刷をやめて増税すればいい」という。

MMTはバカバカしいようにみえるが、本質的にはFTPLと同じトートロジーだから、論理的には間違っていない。金利が上がると危険だが、むしろゼロ金利でも貯蓄過剰になっている日本では、民間の代わりに政府が投資するという発想は、まったくナンセンスともいえない。問題は、この財政インフレを政府がコントロールできるのかということだ。

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