韓国の大法院が戦時中の徴用工について新日鉄住金に賠償を求めた判決が話題になっているが、「賠償は日韓基本条約で終わった」というコメントは事実誤認だ。日韓条約と請求権協定は賠償ではない。外務省の大臣談話にもあるように、
日韓請求権協定は,日本から韓国に対して,無償3億ドル,有償2億ドルの資金協力を約束する(第1条)とともに,両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産,権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決」されており,いかなる主張もすることはできない(第2条)ことを定めており,これまでの日韓関係の基礎となってきました。
日韓条約は「資金協力」であって「賠償」ではない。1910年の日韓併合条約は国際法にもとづき、当時の国際社会でも広く認められた条約だから、日本に賠償の義務はない。これは普遍的な原則で、植民地支配について賠償した旧宗主国はない。日本政府も一貫して、賠償も謝罪もしないという立場だ。これに対して韓国は「日韓併合は武力で強要されたものだ」と主張して賠償を求めたため、サンフランシスコ条約で国交が結べなかった。

しかし1960年代に韓国経済が行き詰まったため朴正熙大統領が妥協し、日本が賠償ではなく5億ドルの「資金協力」を行う協定が1965年に結ばれた。これは当時も根拠不明の「つかみ金」と批判されたので「完全かつ最終的に解決」されるという文言が明記されたが、これをくつがえしたのが1990年代に出てきた慰安婦問題だった。

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