歴史の終わり〈上〉歴史の「終点」に立つ最後の人間
安倍首相は3期目の課題として「生涯現役」をめざすという。定年を65歳に延長しても、平均寿命まで20年ぐらいあるので、年金をもらわないで働いてほしいということだろうが、それができるのは政治家と自営業ぐらいだ。この長い余暇をどう過ごすかは、長期停滞時代の最大の課題だと思う。

この点で日本は先進国である。フランシス・フクヤマは冷戦の終了後、自由と民主主義を超える価値観は出てこないという「歴史の終わり」を提唱して話題を呼んだが、この元祖アレクサンドル・コジェーヴが1970年代に来日したとき、日本は「ポスト歴史」の社会だと賞賛したという。そこでは政治的な価値観の対立はなくなり、人々は自民党の長期政権のもとで消費文化を楽しんでいた。

そういう文化ができたのは、江戸時代である。武士は戦国時代までは社会の中心だったが、平和になると失業してしまう。ヨーロッパでは軍人の仕事をつくるために戦争が繰り返されたが、徳川幕府は「天下泰平」を維持して、武士の仕事をなくしてしまった。このため暇をどうやってつぶすかが深刻な問題になったが、その技術を開発したのが町人だった。

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