世界戦争から革命へ (ロシア革命とソ連の世紀 第1巻)
今月はロシア革命(10月革命)から100年。いろいろな本が出ているが、その多くは本書のいう「ボリシェヴィキの語り」を脱していない。1917年のロシアで起こった出来事のピークが10月革命であり、それは(よくも悪くも)ロシアの伝統とは断絶した政治体制だったという見方は今なお根強い。

だが本書のような最近の研究が明らかにするのは、10月革命がマルクスやエンゲルスの考えた社会主義(共産主義)とはほとんど関係なく、ロシア人が人民専制と呼んだものだったということだ。それはツァーリをボリシェヴィキに置き換えたクーデタで、革命と呼べるかどうかも疑問だが、専制国家の伝統になじんだロシア人には受け入れやすかった。

レーニンはそれを「歴史の法則」という言葉で語った。ロシア革命は資本主義から社会主義への移行という普遍的な法則の証明であり、市場経済は計画経済に置き換えられ、国家は死滅して国際的な労働者のコミューンが生まれる――そういう語りは今も一部の人に空想的平和主義として残っている。

社会主義のイメージは否定的にも受け継がれているが、ロシアや中国の悲劇の原因は社会主義だったのか。資本主義のもとでは、戦争や虐殺は起こらないのか。1989年から崩壊したのが社会主義ではなく専制国家だったとすれば、それは資本主義がすぐれているという証明にはならないのではないか。

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