江戸の災害史 - 徳川日本の経験に学ぶ (中公新書)
近代ヨーロッパの社会をつくった大きな原因が戦争だということは、社会科学の共通理解になりつつある。日本は16世紀までヨーロッパとあまり変わらない「封建社会」だったが、江戸時代に長い平和が続き、それとはまったく違う社会になったといわれている。

しかし本書も問いかけるように「江戸時代は本当に平和だったのだろうか。一体平和とは何だろうか。たしかに戦争はなかったが、じつは江戸時代は、わたしたちが想像する以上に生き延びるのに苦労の多い時代であった」。19世紀末の平均寿命は43歳ぐらいと推定され、生まれた子供の半分は5歳までに死亡した。17世紀に日本の人口は2倍以上になったが、18世紀以降はほとんど増えなくなった。

その大きな原因は災害だった。特に18世紀後半から、地震や火災や飢饉などが多発した。それは自然災害が増えたのではなく、人口が増えて都市に集中したため、被害が増えたのだ。特に1780年ごろの天明の大飢饉は、社会を大きく変えるインパクトがあった。そのころから戦争で戦うのではなく、災害で助け合うことが日本社会のモラルになったと思われる。

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