今週は夏休みだが、アゴラの久保田さんの記事が気になったので、ひとことコメント。「アベノミクスの4年半を振り返ると、景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げた」という「大機小機」の評価が正しいかどうかは「アベノミクス」の定義による。それをリフレ(人為的インフレ)政策と定義すると、リフレが失敗したことは明白だ。
IMFの対日4条協議報告書の表現によれば「金融政策の影響は弱く、インフレ率は低水準にとどまっている」。日銀の指標とする物価上昇率(Core ex. fresh food w/o VAT)は、昨年のマイナスから今年ようやくゼロ近辺に戻しただけだ。2%のインフレ目標は「2019年度ごろ」に先送りされたが、これは無期延期に等しい。
ではなぜリフレが失敗したのに、日本経済は(短期的には)好調なのだろうか。その原因は財政政策しかありえないが、プライマリーバランス(GDP比)は安倍政権で3%ポイント改善し、単年度の財政赤字は縮小した。つまりマクロ経済的にみると、政府支出は相対的に減ったのに需給ギャップは縮小しているのだ。これが雇用の好調な原因だが、それはなぜだろうか?
その一つの原因は円安だが、もう一つは日銀が巨額の財政ファイナンスをやったことだろう。黒田総裁が就任してから現在まで、日銀の保有資産は3倍になり、500兆円を超えた。これによってインフレは起こらなかったが、長期金利は下がり、特に昨年1月のマイナス金利政策でほぼゼロに張りついた。
日銀による長期国債の買い入れは金融政策ではなく、日銀が民間のリスクを肩代わりする財政政策である。これは実質的な国債の日銀引き受けであり、金利リスクが日銀に集中した。銀行はノーリスクの国債でもうかり、みんなハッピーになったように見えるが、日銀は巨額の含み損を抱えたので、金利上昇局面では数十兆円の債務超過になる。
日銀だけなら含み損を計上しなければすむが、地方金融機関で「取り付け」が起こると、1998年をはるかに上回る金融危機が起こる可能性がある。IMFは次の図のようなリスクを指摘しているが、特に気になるのは市場の織り込んでいない「地政学リスク」だ。朝鮮半島の有事や中国バブルの崩壊などの「ブラックスワン」に対して、日本経済はきわめて脆弱になっているのだ。
ではなぜリフレが失敗したのに、日本経済は(短期的には)好調なのだろうか。その原因は財政政策しかありえないが、プライマリーバランス(GDP比)は安倍政権で3%ポイント改善し、単年度の財政赤字は縮小した。つまりマクロ経済的にみると、政府支出は相対的に減ったのに需給ギャップは縮小しているのだ。これが雇用の好調な原因だが、それはなぜだろうか?
その一つの原因は円安だが、もう一つは日銀が巨額の財政ファイナンスをやったことだろう。黒田総裁が就任してから現在まで、日銀の保有資産は3倍になり、500兆円を超えた。これによってインフレは起こらなかったが、長期金利は下がり、特に昨年1月のマイナス金利政策でほぼゼロに張りついた。
日銀による長期国債の買い入れは金融政策ではなく、日銀が民間のリスクを肩代わりする財政政策である。これは実質的な国債の日銀引き受けであり、金利リスクが日銀に集中した。銀行はノーリスクの国債でもうかり、みんなハッピーになったように見えるが、日銀は巨額の含み損を抱えたので、金利上昇局面では数十兆円の債務超過になる。
日銀だけなら含み損を計上しなければすむが、地方金融機関で「取り付け」が起こると、1998年をはるかに上回る金融危機が起こる可能性がある。IMFは次の図のようなリスクを指摘しているが、特に気になるのは市場の織り込んでいない「地政学リスク」だ。朝鮮半島の有事や中国バブルの崩壊などの「ブラックスワン」に対して、日本経済はきわめて脆弱になっているのだ。