北朝鮮情勢がまた緊迫してきた。こういう状況に見て見ぬふりして「第9条で戦争を止める」という憲法学者に必要なのは、説得ではなく治療である。篠田英朗氏の新著は、ガラパゴス憲法学者の精神分析ともいえよう。精神分析は医学を装った「告解」で、晩年のフーコーが追究した「真理による統治」の一種である。

それは「不倫」のような罪を教会が作り出し、聖職者が信徒の弱みを握って個人的に支配する装置だった。宮沢俊義にとって不倫のように恥ずかしい「原罪」は、時局に迎合したという過去だったが、当時の東大法学部の多くの教官がこうした罪を大なり小なり背負っていた(経済学部は積極的に戦争に協力した)。

しかし丸山眞男には、時局に抵抗して検挙された証拠があった。彼はその特権的な立場から、聖職者のように同僚を裁き、「戦後日本の国体」をつくることができた。彼の公式に発表した論文は注意深く同僚の批判を避けているが、非公開の座談会では「宮沢先生の授業は戦時中は漫談みたいになった」と軽蔑していた。

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