The Economics of Tax Policy
マンキューなどの国境調整炭素税は合理的な提言で、石油メジャーも参加した。これが実現すると、国境調整税(DBCFT)という画期的な改革の第一歩になる。これはトランプの保護主義と混同しやすいが、中身はまったく違う。本書はそのしくみを学問的にくわしく論じたものだが、超簡単に解説しよう。

日本から自動車を輸出するとき、アメリカが20%の関税をかけるとしよう。これは国内製品の保護になるのでWTO違反で提訴されるが、すべての輸入品にも国内品にも一律にかけたら、そういうバイアスはなくなる。これはEUの付加価値税と同じく国内にもかける関税だから、資源配分に中立なのだ。海外に対しては輸入制限になるが、そのぶんドルが上がって調整され、貿易収支は変わらない。

日本も消費税を20%に引き上げると「保護主義競争」になって世界経済が縮小する、というのがアダム・スミス以来の経済学のセントラル・ドグマだが、これはDBCFTには当てはまらない。それは生産地に関係なく同じ税率を消費地でかける一括固定税なので、理論的には資源配分のゆがみは最小になり、WTOもFTAも貿易交渉も必要なくなる。

DBCFTを導入する代わりに資源配分のゆがみが最大の法人税を廃止すれば、税収中立にしても5%以上はGDPが増える。東京のお台場に法人税ゼロの「オフショア特区」をつくれば、世界中から銀行が集まってくるだろう。

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