日銀の「出口戦略」は時間の問題だと思うが、黒田総裁は粘っている。それはここでテーパリングすると、彼の掲げた2%のインフレ目標をあきらめたことを世界に示す敗北宣言になるからだが、まだ量的緩和が足りないと思っている可能性もある。これは昔ちょっと話題になったスヴェンソン(元スウェーデン中央銀行副総裁)のフールプルーフ理論とも解釈できる。
これは「デフレ脱却はバカでもできる」という意味で、物価水準ターゲティングと為替レート・ペッグの組み合わせだ。日銀が、たとえば「物価水準を2%上げるために1ドル=120円まで量的緩和する」と宣言して為替介入し、円を切り下げればよい。日銀法では為替介入の権限はないが、日銀が財務省と協調して「非不胎化介入」すれば、理論的には可能である。
黒田総裁の掲げた「インフレ目標」は、実は円安誘導だったのではないか、と私は指摘したことがあるが、元日銀理事の早川英男氏の意見も同じだった。ではなぜバカでもできるはずのインフレ目標が失敗したのだろうか?
今までの実績をみると、スヴェンソンの理論は2014年後半からの大幅な円安をうまく説明している。黒田総裁のサプライズは、デフレ予想の「悪い均衡」から脱却して「よい均衡」にジャンプさせるためだったのだ。スヴェンソンの予想が正しいとすれば、現在の110円程度の円安では足りない。日銀がもっと激しく緩和して介入すれば、理論的には「よい均衡」にジャンプする可能性もある。

マネタリーベース残高(左軸)と名目為替レート(ドル/円)
大きな見込み違いは、円安の効果が大したことなかったことだ。黒田総裁が就任した2013年の1ドル=100円から2015年の125円まで円は20%も下がったが、成長率はほとんど上がらなかった。日本の製造業はすでに(移転できる企業は)海外移転をすすめており、一時的な円安で日本に帰ってくることはないからだ。
これもスヴェンソンは「日銀のコミットメントが足りない」というかもしれない。彼の目的を達するためには、1ドル=140円ぐらいにペッグする必要がある。これはスウェーデンのような小国ならいいだろうが、日本では政治的に不可能だ。実際にやったら、ハイパーインフレにジャンプするかもしれない。
これは「デフレ脱却はバカでもできる」という意味で、物価水準ターゲティングと為替レート・ペッグの組み合わせだ。日銀が、たとえば「物価水準を2%上げるために1ドル=120円まで量的緩和する」と宣言して為替介入し、円を切り下げればよい。日銀法では為替介入の権限はないが、日銀が財務省と協調して「非不胎化介入」すれば、理論的には可能である。
黒田総裁の掲げた「インフレ目標」は、実は円安誘導だったのではないか、と私は指摘したことがあるが、元日銀理事の早川英男氏の意見も同じだった。ではなぜバカでもできるはずのインフレ目標が失敗したのだろうか?
「よい均衡」にジャンプするサプライズ
その原因は、スヴェンソンの理論によれば、円安が足りなかったからだ。日本の物価水準が望ましい水準を20%ぐらい下回っているとすると、為替の減価でそれを調整するには、もっと大きな円安が必要だ。彼は2001年に140~50円と試算している。状況は大きく変わったが、望ましい水準はそれほど変わらないだろう。今までの実績をみると、スヴェンソンの理論は2014年後半からの大幅な円安をうまく説明している。黒田総裁のサプライズは、デフレ予想の「悪い均衡」から脱却して「よい均衡」にジャンプさせるためだったのだ。スヴェンソンの予想が正しいとすれば、現在の110円程度の円安では足りない。日銀がもっと激しく緩和して介入すれば、理論的には「よい均衡」にジャンプする可能性もある。

マネタリーベース残高(左軸)と名目為替レート(ドル/円)
大きな見込み違いは、円安の効果が大したことなかったことだ。黒田総裁が就任した2013年の1ドル=100円から2015年の125円まで円は20%も下がったが、成長率はほとんど上がらなかった。日本の製造業はすでに(移転できる企業は)海外移転をすすめており、一時的な円安で日本に帰ってくることはないからだ。
これもスヴェンソンは「日銀のコミットメントが足りない」というかもしれない。彼の目的を達するためには、1ドル=140円ぐらいにペッグする必要がある。これはスウェーデンのような小国ならいいだろうが、日本では政治的に不可能だ。実際にやったら、ハイパーインフレにジャンプするかもしれない。
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。