JBpressで紹介したように、片岡剛士審議委員の人事はかなり意味深長である。日銀の事務方はリフレ派なんかバカにしているので、これは(黒田総裁を含めて)内部から出てきた人事ではなく、首相官邸の意向と考えられる。
特に注目されるのは、片岡氏の最近のレポートで「アベノミクスを貫徹するために財政支出拡大を」というメッセージを明確に打ち出していることだ。官邸がこれに注目して彼を起用したとすると、ゆるやかに出口をめざしていている黒田総裁の再任も危うくなり、出口なき財政拡大と金融緩和がアベノミクス第2幕になる可能性がある。
そこに使われているのが、財政余地(fiscal space)という概念だ。これはもとはBlanchard et al.(1990)に始まる「財政が維持可能な政府債務と現実の債務の差」という考え方で、最近IMFやOECDも提言している。政府債務をゼロにする必要はなく、それが維持可能であればよい。その条件を政府債務が発散しないこととすると、日本のように金利がマイナスになっている場合は財政拡大の余地がある。OECDによれば、次の図のように日本の財政余地は主要国で最大で、GDPの2.2%ぐらいある。
中期の財政余地(GDP比%)出所:OECD
この図だけみると、理論的にありそうな政策はGDP比2%の減税である。これはリフレ派のようにナンセンスな話ではなく、「国債は返し過ぎだ」という安倍首相のコンセプトに合うが、そこには落とし穴がある。
特に注目されるのは、片岡氏の最近のレポートで「アベノミクスを貫徹するために財政支出拡大を」というメッセージを明確に打ち出していることだ。官邸がこれに注目して彼を起用したとすると、ゆるやかに出口をめざしていている黒田総裁の再任も危うくなり、出口なき財政拡大と金融緩和がアベノミクス第2幕になる可能性がある。
そこに使われているのが、財政余地(fiscal space)という概念だ。これはもとはBlanchard et al.(1990)に始まる「財政が維持可能な政府債務と現実の債務の差」という考え方で、最近IMFやOECDも提言している。政府債務をゼロにする必要はなく、それが維持可能であればよい。その条件を政府債務が発散しないこととすると、日本のように金利がマイナスになっている場合は財政拡大の余地がある。OECDによれば、次の図のように日本の財政余地は主要国で最大で、GDPの2.2%ぐらいある。
中期の財政余地(GDP比%)出所:OECD
この図だけみると、理論的にありそうな政策はGDP比2%の減税である。これはリフレ派のようにナンセンスな話ではなく、「国債は返し過ぎだ」という安倍首相のコンセプトに合うが、そこには落とし穴がある。
ネトウヨとリフレ派の推す財政余地
財政余地は中期の概念なので、長期的な財政の維持可能性は度外視している。特に日本の場合は、マイナス金利を前提にプライマリー赤字が発散しない税率を計算しているので、長期金利が上がると財政余地は狭まる。特に政府債務が大きいので、金利が1%上がると国債費(国の支払い利息)が10兆円増え、2%の財政余地は吹っ飛んでしまう。
もう一つは財政拡大で潜在成長率が上がるのかどうかだ。財政赤字の拡大でGDPが増えるのは当たり前で、それは財政がもとに戻ったら終わる。財政拡大が潜在成長率を上げない限り、それは将来世代の負担を増やすだけだ。
OECDは日本について「公的投資が成長に及ぼす影響はきわめて悪い。公的資本ストックがすでに大きく、公的投資の限界効率が低いかマイナスだからである」と書き、財政を拡大しても潜在成長率は上がらない(下がる)と指摘している。
ただ財政余地は、ネトウヨ(原始ケインズ派)やリフレ派の好む「積極財政」だ。内閣官房参与の藤井聡氏や日銀審議委員になる片岡剛士氏など安倍政権のインサイダーが推奨しており、FTPL(物価水準の財政理論)より現実性がある。「アベノミクス第2弾」として採用される可能性があるので、注意が必要だ。
財政余地は中期の概念なので、長期的な財政の維持可能性は度外視している。特に日本の場合は、マイナス金利を前提にプライマリー赤字が発散しない税率を計算しているので、長期金利が上がると財政余地は狭まる。特に政府債務が大きいので、金利が1%上がると国債費(国の支払い利息)が10兆円増え、2%の財政余地は吹っ飛んでしまう。
もう一つは財政拡大で潜在成長率が上がるのかどうかだ。財政赤字の拡大でGDPが増えるのは当たり前で、それは財政がもとに戻ったら終わる。財政拡大が潜在成長率を上げない限り、それは将来世代の負担を増やすだけだ。
OECDは日本について「公的投資が成長に及ぼす影響はきわめて悪い。公的資本ストックがすでに大きく、公的投資の限界効率が低いかマイナスだからである」と書き、財政を拡大しても潜在成長率は上がらない(下がる)と指摘している。
ただ財政余地は、ネトウヨ(原始ケインズ派)やリフレ派の好む「積極財政」だ。内閣官房参与の藤井聡氏や日銀審議委員になる片岡剛士氏など安倍政権のインサイダーが推奨しており、FTPL(物価水準の財政理論)より現実性がある。「アベノミクス第2弾」として採用される可能性があるので、注意が必要だ。