
ニュートンは『プリンキピア』の序文で「本書の目的は神が天地創造された意図をさぐることである」と書いた。彼の神学理論は余技ではなく、量的には物理学の論文よりはるかに多い。彼は(無神論に近い)理神論ではなく、合理主義的なアリウス派だったらしい。
東洋でも、儒教は「天理」という社会的な倫理から自然界の事実を導いた。福沢諭吉はそれを惑溺と批判し、「物ありて然る後に倫あるなり、倫ありて後に物を生ずるに非ず」と書いた。それが彼のつくった「物理」という言葉の意味だが、ニュートンはキリスト教という倫理にもとづいて完璧な物理学を構築した。それはなぜ可能だったのだろうか?
ニュートン力学を生んだキリスト教
まぐれ当たりだ、というのが現代の物理学の答である。重力が距離の2乗に反比例すべき論理的な必然性はないが、今のところ太陽系の中では例外は見つかっていない(銀河系全体ではあやしい)。そのもっともらしい理由は、重力がそれより大きくても小さくても地球が太陽のまわりを公転しない(したがって人類も存在しない)ということである。
ニュートンが『プリンキピア』の総注で「私は仮説を立てない」と書いたのは有名だが、これは当時の天文学で支配的だった「渦動説」に対する批判だった。これは重力を渦動として説明するもので、媒体なしで重力は伝わらないと考えるが、ニュートンはこれを批判し、天文学の壮大な体系は神の秩序として説明するしかないと考えた。
この信念はケプラーの法則がすべての観測データを例外なく説明していることから来たのだろうが、彼はそれを神学的な「命題」として『プリンキピア』に書いた。それは微分積分で簡明に説明できるが、奇妙なことに彼はそれをユークリッド幾何学で説明したので、現代の読者が読むときわめて難解だ。
これは彼が(自分の開発した)微分学がライプニッツと論争中で、まだ学問的に確立した手法と考えていなかったためと思われるが、彼はそれを『数学的原理』と名づけた。そこには世界を一つの原理で説明できるという信仰があった。
ニュートンは序文で「同じ自然的影響については、できるかぎり同じ原因を用いて説明すべきだ」と書いているので、彼の思想の起源をオッカムの懐疑主義に求めることが多いが、彼の「仮説を立てない」という信念は「世界は一義的に決まる」というドゥンス=スコトゥスの本質主義に近い。「重力が距離の1.99乗に反比例することは絶対ない」というのは信仰にすぎないからだ。
ニュートン自身はオッカムもスコトゥスも参照していないので影響関係は不明だが、世界史上で初めて重力の加速度を観測したのは、オクスフォード大学のスコトゥスの弟子だった。少なくとも論理的には、スコトゥスの神学が近代科学の元祖であり、それは最近の思弁的実在論にも通じる。
まぐれ当たりだ、というのが現代の物理学の答である。重力が距離の2乗に反比例すべき論理的な必然性はないが、今のところ太陽系の中では例外は見つかっていない(銀河系全体ではあやしい)。そのもっともらしい理由は、重力がそれより大きくても小さくても地球が太陽のまわりを公転しない(したがって人類も存在しない)ということである。
ニュートンが『プリンキピア』の総注で「私は仮説を立てない」と書いたのは有名だが、これは当時の天文学で支配的だった「渦動説」に対する批判だった。これは重力を渦動として説明するもので、媒体なしで重力は伝わらないと考えるが、ニュートンはこれを批判し、天文学の壮大な体系は神の秩序として説明するしかないと考えた。
この信念はケプラーの法則がすべての観測データを例外なく説明していることから来たのだろうが、彼はそれを神学的な「命題」として『プリンキピア』に書いた。それは微分積分で簡明に説明できるが、奇妙なことに彼はそれをユークリッド幾何学で説明したので、現代の読者が読むときわめて難解だ。
これは彼が(自分の開発した)微分学がライプニッツと論争中で、まだ学問的に確立した手法と考えていなかったためと思われるが、彼はそれを『数学的原理』と名づけた。そこには世界を一つの原理で説明できるという信仰があった。
ニュートンは序文で「同じ自然的影響については、できるかぎり同じ原因を用いて説明すべきだ」と書いているので、彼の思想の起源をオッカムの懐疑主義に求めることが多いが、彼の「仮説を立てない」という信念は「世界は一義的に決まる」というドゥンス=スコトゥスの本質主義に近い。「重力が距離の1.99乗に反比例することは絶対ない」というのは信仰にすぎないからだ。
ニュートン自身はオッカムもスコトゥスも参照していないので影響関係は不明だが、世界史上で初めて重力の加速度を観測したのは、オクスフォード大学のスコトゥスの弟子だった。少なくとも論理的には、スコトゥスの神学が近代科学の元祖であり、それは最近の思弁的実在論にも通じる。
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