『丸山眞男と平泉澄』のテーマは、この2人が闘った敵は何か、ということだ。結論だけいうと、彼らの共通の敵は、山本七平のいう「空気」と考えることができるが、丸山も平泉も山本も、その正体を解明しないまま世を去った。晩年の丸山はそれを「まつりごと」と名づけたが、その原因はまったく語らなかった。

空気はゲーム理論でいうと共有知識だが、図のようにナッシュ均衡は複数ある。ここでペイオフを対称として「保守」を1に標準化し、「革新」のペイオフがX>0だとする。読売新聞ではX<1、朝日新聞ではX>1だとすると、読売(左上)では自分だけ革新的な記事を書くと出世できず、朝日(右下)では自分だけ保守になると出世できない(ペイオフが0になる)。

空気


ナッシュ均衡はXが1より大きくても小さくても、初期値のみで決まる。朝日の「革新」のペイオフXが1より小さくなっても、上司が革新である限り、自分だけ保守では出世競争に生き残れない。これは読売も同じで、図のようなペイオフが社内の共有知識になっている限り、空気を読んで上司に迎合することが合理的(部分最適)なのだ。

続きは1月16日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。