井上毅と明治国家
自民党総裁選で、高市早苗氏が意外に善戦している。その特徴は、議員票に比べて党員・党友票が多いことだ。産経によると「高市氏には自民党員と共有する物語がある」という。特に戦前派の超高齢者の支持が強い。

その物語とは、ありていにいえば皇国史観だろう。これはそれほど古い物語ではなく、たかだか19世紀の会沢正志斎や藤田東湖などの後期水戸学から生まれたものだ。これが尊王攘夷に受け継がれたが、それを制度化したのが明治政府の法制局長官だった井上毅である。

彼の思想は尊王攘夷のようなテロリズムではなく、明治国家を建設する合理主義だった。彼は明治憲法を起草し、教育勅語や軍人勅諭や皇室典範を決めた。「万世一系の天皇」が統治する明治国家の骨格は、ほとんど井上が決めたといってもよい。

その手本は(彼が留学で学んだ)プロイセン憲法だったが、井上はそれに儒教思想を加えて「万世一系の男系天皇」という物語をつくった。おもしろいのは、彼が女系天皇を否定した理由だ。女系天皇を認めると天皇の姓が変わり、易姓革命になってしまうというのだ。

続きはアゴラサロンでどうぞ(初月無料)