
4月7日の国際金融経済分析会合に
Jean Tiroleが招かれるというので、友人にSkypeのIDを教えてもらって国際電話してみた。
- 私 初めまして、ティロール先生。経済産業研究所で、あなたの弟子Hagiuの同僚だった池田と申します。
- ティロール(J.T.) やぁ! 彼は今たしかHBSだよね。
- 私 はい。研究所では、先生のThe Theory of Corporate Financeを読んで、とても感銘を受けました。あれが企業理論の決定版だと思います。
- J.T. ありがとう。でもあれはOliver Hartの所有権理論をエージェンシー理論と組み合わせただけだから、本当は先に彼がスウェーデン銀行賞をもらうべきだった。
- 私 私もWilliamsonと一緒に受賞すべきだったと思いますが、それさておき、7日に日本に来られるそうですね。アベノミクスについてはどうお考えですか?
- J.T. 私は日本語が読めないので、英語の文献で判断するしかないんだけど、率直にいってかなり混乱してるね。中央銀行がQEでCPIを操作できるなんて、理論的にも実証的にも葬られた話だ。ヨーロッパで失敗したマイナス金利を今ごろ始めるなんて信じられない。だれが経済政策を決めてるの?
- 私 それがよくわからないんです。一応、首相の顧問としては浜田宏一さんという私の先生がいるんですが。
- J.T. イェールにいたハマダかい? 私は彼の日本語のセミナーはわからなかった。
- 私 いえ、あのセミナーは英語だったんですが…
- J.T. あ、そうだったの… しかし彼はオールド・ケインジアンだから、forward guidanceなんて信じてないんじゃないの?
- 私 そうなんですよ。Krugmanも去年、IMFの研究会で「forward guidanceは誤りだった。中央銀行総裁の発言が影響をもつのは、参加者の多くがプロである金融市場に限られる」と認めました。浜田先生も最近は「リフレの根拠はマンデル・フレミングなので、景気がよくなったらインフレ目標なんていらない」といいはじめて、リフレ派に「浜田は3年前に言ったことを忘れるアルツハイマーだ」などと罵倒されてます。
- J.T. 日本経済は、マクロ指標からみるかぎり、「景気がいい」といえる状況じゃないだろ? どっちにしても私の教科書にも書いたように、企業でも政府でも、誰がresidual claimantかを一意的に決めることが重要だ。今の日本政府は最悪のjoint ownershipになって、全員が拒否権をもっているので誰も決められないんだよ。
追記:誤解する人がいるので、念のため日付を見てください。