陸奥宗光とその時代 (PHP文庫)韓国は尹錫悦大統領が弾劾され、不安定な情勢になってきた。北朝鮮は介入のチャンスをねらっているだろうが、その背後にはロシアがいる。朝鮮半島は19世紀から「東のバルカン半島」と呼ばれ、地政学的な要衝にあって政権が弱体なため、列強の草刈り場だった。

明治の日本は50年近くかけて諸外国と交渉し、不平等条約をすべて改正した。この交渉をしたのが陸奥宗光だった。藩閥政府の中で和歌山藩の出身だった彼が外相になったのは、各国に留学した国際的視野によるものだった。伊藤博文は陸奥を高く評価し、政友会の後継総裁(そして首相)に考えていたが、惜しくも54歳で死去した。

列強と対等の独立国家になった日本は、朝鮮の独立をめぐって清と争い、日清戦争が起こる。陸奥の『蹇蹇録』は日清戦争を記録した外交文書である。そこに書かれているのは清やロシアとの外交交渉だけでなく、戦争に熱狂する軍部や国内世論との闘いだ。

彼の受諾した三国干渉に国民は激怒したが、それは日本の払底した戦力を見きわめた冷静な判断だった。彼のような外交官が1930年代にもいれば、日本はあの愚かな戦争には突入しなかっただろう。

続きは12月23日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンで(初月無料)