増補改訂 日本の無思想 (平凡社ライブラリー)
「ホンネとタテマエ」を英語に訳すのはむずかしいが、近いのはpolitical correctnessだろう。著者は、日本人が敗戦で負ったトラウマが護憲派のタテマエへの執着をもたらす一方、改憲派の(政治的に正しくない)ホンネとの葛藤が続いてきたという。

本書の初版が出た1999年にはタテマエ論が圧倒的に優勢だったが、今は情勢が逆転した。慰安婦問題で朝日新聞を初めとするタテマエ派が壊滅的な打撃を受け、安保法制をめぐる論戦でも野党は乱闘するだけだった。

その点で本書の問題設定は大きくずれており、著者の問題にするホンネ派の屈折より、タテマエ派の硬直性が「公共空間」の共有を阻害し、無思想なポピュリズムを増殖させている。

続きは12月21日(月)朝7時に配信する池田信夫ブログマガジンでどうぞ。