ビヒモス (岩波文庫)
武藤貴也とかいう自民党議員が「だって戦争に行きたくないじゃん」というのは利己的な考えだ、とツイートしたことが話題を呼んでいるが、これは逆である。戦争に行かなくても、弾道ミサイルが飛んできて殺されるかもしれない。そういうリスクを含めて「死にたくない」という人々の願望が戦争を抑止しているのだ。

本書は、おそらく戦争を論じた著作としては歴史上もっとも著名な『リヴァイアサン』の続編だが、なんと昨年末に本邦初訳された。それはホッブズが明確に民主制を否定し、国王の主権を擁護しているからだろう。

本書を読むと、有名な「万人の万人に対する戦い」という自然状態は、抽象的な理論ではなく、17世紀イギリスの内戦だったことがわかる。ここでホッブズは、繰り返される戦争を防ぐ究極的な手段は、国家の暴力による死の恐怖だという彼の政治哲学を具体的に説明している。それはJBpressにも書いたように、冷戦期の抑止戦略の原理でもあった。

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