安倍首相の政策は昔の軍部に似てきた――といっても、彼がファシストだとか安保法案が「戦争法案」だとかいうわけではない。6月30日に閣議決定された「骨太の方針」は、杉之尾宜生氏のいう日米開戦とよく似ているからだ。

彼も指摘するように、戦争の判断は国際情勢を客観的にみて政府が行なうもので、ここで勝算なしと判断した場合には、開戦してはいけない。しかし日本はまず陸軍が「作戦計画」を決めて開戦になだれ込み、戦争が始まってから日本が短期決戦で勝つという希望的観測の「世界情勢判断」を出した。

今回の骨太方針も「中長期的に、実質GDP成長率2%程度、名目GDP成長率3%程度を上回る経済成長の実現を目指す」という希望的観測にもとづいて、歳出削減なしで「2020年度にプライマリーバランスを黒字化」するという目標を掲げている。成長を目指すのは結構なことだが、それが実現するかどうかは別の問題である。

ニューズウィークでも書いたように、この10年の名目成長率は平均0.6%である。さらに労働人口がこれから毎年1%以上減るというのに、成長率が3%に急上昇することを前提に財政再建計画を立てるのは、「真珠湾をたたけばアメリカは恐れ入って降伏する」という前提で戦争を始めるに等しい。

続きは7月12日配信の池田信夫ブログマガジンでどうぞ。