トランプ関税は支離滅裂だが、彼が見ているのは重要な問題である。アメリカの成長率は高く、平均所得は上がっているが、格差は拡大した。トランプ政権の中心、イーロン・マスクの資産は3300~3700億ドルで世界一、ラトニック商務長官は20~40億ドル、ベッセント財務長官は7~13億ドルと推定されている。
このような富の集中は最近の現象である。図のように2000年にはトップ10%の資産はGDPの約60%だったが、2019年には72%になった。これを逆転し、アメリカを「再工業化」しようというのがトランプ政権の発想だが、それは時代錯誤である。

富の分配の推移(Business Insiderより)
グローバリゼーションで世界の格差は縮小し、最貧層の人口は大きく減った。それを逆転することはできないが、格差は自然現象ではない。その一つの原因はここ20年の上位企業の独占度の増加である。これによって利潤率が上がり、上位企業のシェアが高まった。

企業集中度の推移(本書より)
これは全業種に見られる現象で、その原因はレーガン政権以来の新自由主義である。独占企業を規制するのではなく、新規参入の余地があればよいとするシカゴ学派の独禁政策が主流になり、マイクロソフト訴訟のような独禁訴訟で司法省が敗れた。
ITの急速な発達で大きく変化したのが金融である。昔の銀行は預金者の金を融資するだけだったが、1990年代以降は国際資本移動の規制緩和で、余剰資金をグローバルに運用する投資ファンドが増え、トレーダーの所得は大きく上がった。

金融部門の規制と賃金(本書より)
このようにインターネットと規制緩和でIT産業や金融のような知識集約型産業に富が集中したことがアメリカが成長した原因であり、また格差の拡大した要因でもある。ヨーロッパはアメリカほど規制緩和が進まなかったために格差は拡大しなかったが、成長もしなかった。
これをどうすべきかはむずかしい問題である。トランプ政権ではマスクがDOGE(政府効率化省)で急激な規制撤廃を進めているが、規制がなくなると競争が起こるとは限らない。資本力にまさる独占企業が新企業を排除したり買収したりするからだ。企業買収の規制は強化することが望ましい。
こうした変化の原因はグローバリゼーションだが、それが格差を拡大するのはスキルバイアス技術進歩(SBTC)のためだ。これは技術と補完的なスキルをもつ(SEのような)労働者の賃金が上がり、技術に代替される単純労働者の賃金が下がる現象だが、今後AIで情報技術が高度化すると、この格差はますます拡大するだろう。
このような富の集中は最近の現象である。図のように2000年にはトップ10%の資産はGDPの約60%だったが、2019年には72%になった。これを逆転し、アメリカを「再工業化」しようというのがトランプ政権の発想だが、それは時代錯誤である。

富の分配の推移(Business Insiderより)
グローバリゼーションで世界の格差は縮小し、最貧層の人口は大きく減った。それを逆転することはできないが、格差は自然現象ではない。その一つの原因はここ20年の上位企業の独占度の増加である。これによって利潤率が上がり、上位企業のシェアが高まった。

企業集中度の推移(本書より)
これは全業種に見られる現象で、その原因はレーガン政権以来の新自由主義である。独占企業を規制するのではなく、新規参入の余地があればよいとするシカゴ学派の独禁政策が主流になり、マイクロソフト訴訟のような独禁訴訟で司法省が敗れた。
インターネットと規制緩和が独占を促進した
もう一つはテクノロジーの変化である。特にインターネット企業では国内シェアは無意味になり、GAFAMのようなグローバル独占企業が生まれた。ここでは固定費はソフトウェアなので、多くのユーザーが使えば使うほど平均費用が下がる費用逓減が起こり、最適規模は無限大になる。ITの急速な発達で大きく変化したのが金融である。昔の銀行は預金者の金を融資するだけだったが、1990年代以降は国際資本移動の規制緩和で、余剰資金をグローバルに運用する投資ファンドが増え、トレーダーの所得は大きく上がった。

金融部門の規制と賃金(本書より)
このようにインターネットと規制緩和でIT産業や金融のような知識集約型産業に富が集中したことがアメリカが成長した原因であり、また格差の拡大した要因でもある。ヨーロッパはアメリカほど規制緩和が進まなかったために格差は拡大しなかったが、成長もしなかった。
これをどうすべきかはむずかしい問題である。トランプ政権ではマスクがDOGE(政府効率化省)で急激な規制撤廃を進めているが、規制がなくなると競争が起こるとは限らない。資本力にまさる独占企業が新企業を排除したり買収したりするからだ。企業買収の規制は強化することが望ましい。
こうした変化の原因はグローバリゼーションだが、それが格差を拡大するのはスキルバイアス技術進歩(SBTC)のためだ。これは技術と補完的なスキルをもつ(SEのような)労働者の賃金が上がり、技術に代替される単純労働者の賃金が下がる現象だが、今後AIで情報技術が高度化すると、この格差はますます拡大するだろう。