1993年に「クローズアップ現代」が始まったとき、私はそのスタッフの1人だった。これが始まった一つの原因は、ドキュメンタリーという番組フォーマットの限界が見えてきたことだった。

かつてNHKのドキュメンタリーは、数々の名作を生み出した。初期の「日本の素顔」シリーズのころは録音ができなかったので、「奇病のかげに」のように映像にナレーションでをつけるスタイルだったが、マイクで録音できるようになると、インタビューが中心になった。しかしフィルム時代は1本3分といった限界があり、あまり複雑な構成はできなかった。

それがビデオ(ハンディカメラ)になってから長時間撮れるようになり、作り方がドラマ的になった。もともと日本のテレビは1950年代の映画の黄金時代に放送が始まり、それが衰退するにつれて職を失った映画業界の人がテレビに流れてきたので、ドキュメンタリーにも映画的な物語を求める傾向があったが、これがビデオ化で強まったのだ。

しかし30分の物語にするには起承転結が必要で、そんなおもしろい話がそうあるものではない。このため70年代に45分の「NHK特集」が始まったとき、30分のドキュメンタリーはいったん終わったが、いろいろな形で情報番組が残った。これを各部がバラバラにつくるとネタが競合するので一本化しようというのが、クロ現の最初の発想だった。

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