キャプチャ政府は、日銀の審議委員に原田泰氏を起用する人事案を提示した。予想された人事だが、この際、彼のこれまでの言動を検証しておこう。たとえば昨年9月のVOICEで、彼はこう予言している。
2001年から06年までの量的金融緩和政策では、物価が上がる前に金融緩和政策をやめてしまったので、金融政策が現実に物価を上げる効果は検証されないようである。[…]2013年4月からの黒田緩和では、物価が上がるまで緩和を続けるとしているので、金融緩和政策が期待物価上昇率を上げるだけでなく、現実に物価を上げることを検証できるだろう。
残念ながらCPI上昇率は低下し、今年なかばにはデフレに戻ると予想されている。彼も昨年11月には、「エコノミストはなぜ間違えるのか」と題して「消費増税が悪い」と責任を転嫁し始めたが、増税が問題なら、その効果を超える追加緩和をすればいい。ところが追加緩和の効果もまったく出ない。これは最初の記事で彼が書いた「現実に物価を上げることを検証できる」という予想を明らかに反証している。

さすがに彼も今年になってその事実を認め、インタビューで「2%目標を(2015年度に)達成できなくても良いのではないか。2%程度の(実質)経済成長が続けられるような政策運営が重要」と言い出した。

しかし円安で輸出が増えなかったことは認め、「私自身もリフレ派のエコノミストであるので、まず正直に意外な結果であったことを告白しておこう」という。誤りを認めたリフレ派は珍しいので、この点は評価してもいい。問題は、リフレが破綻したことを反省しないで、さらなる国債購入を求めていることだ。
日銀のバランスシートが傷んだと思われても、信用が失われることはありえない。国はすでに1千兆円もの国債を発行して、バランスシートを傷めているのだから、日銀のバランスシートが傷もうが関係ない。
つまり日銀は国債を無限に買えるということだ。これが事実とすれば、税金を廃止して財政はすべて国債でまかなう「無税国家」ができる。ところがそんなことはありえないので、「さすがにいつかは2%の物価上昇を迎えるだろう。そのときに静かに金融緩和を縮小すればいい」という。

たとえば黒田総裁が「緩和をやめる」といって300兆円を超える(大きな含み損を抱えた)国債を売り始めたら、日銀はバランスシートを「静かに縮小」できるのか。そのとき金利が上がって国債市場が崩壊することはないのか。これまでことごとく間違っていた原田氏の予想が、今度に限って当たることは考えられない。

原田氏がいつも間違えるのは、万能の日銀が自由自在に物価や金利をコントロールできると信じているからだ。そして日銀の意思決定に影響を与える彼が間違っていると、今度は大変なことが起こるのである。