きのうのVlogでも話したことだが、朝日新聞の失敗の原因は、終戦直後から彼らが受け継いできた絶対平和主義であり、その教祖が丸山眞男である。
1950年に丸山が中心となって書かれた平和問題談話会声明の「全面講和」の平和主義は、いま読むとナンセンスだが、社会党の運動方針となり、いまだに朝日新聞や日教組などの「戦後リベラル」の亜流に受け継がれている。
1950年に丸山が中心となって書かれた平和問題談話会声明の「全面講和」の平和主義は、いま読むとナンセンスだが、社会党の運動方針となり、いまだに朝日新聞や日教組などの「戦後リベラル」の亜流に受け継がれている。
しかし丸山自身は、60年安保のスターになったあと、マスコミから姿を消した。それは政治活動の「夜店」を畳んで日本政治思想史の「本店」に専念するためだ、と彼はいっているが、その後は過去の政治活動についてまったく語らなくなる。
本書の原型は1952年に出版された小冊子だが、丸山はこれを絶版にし、論文集にも収録しなかった(今年、文庫で復刊)。その理由を彼は「デモクラシーを支える自発的結社のモデルとして労働組合を考えていた」と語り、「これは完全に間違いだった」と率直に認めている。
本書に収録された「権力と道徳」という論文で、丸山は民主主義というクラートス(支配)を支えるエートス(倫理)が日本にあるのかという問題を追究している。西洋では個人を救済するキリスト教のエートスを基礎にして、近代国家のクラートスが築かれた。ローマ教会は俗権と妥協して御用宗教となったが、プロテスタントはパウロ的な普遍主義を掲げて国家=教会と戦った。
この矛盾が集約的にあらわれたのがドイツだった。ヘーゲルは国家理性が宗教の矛盾を統一すると考えたが、ニーチェは国家を「組織された非道徳性」と嘲笑した。ウェーバーはニーチェの影響を受け、国家は暴力装置であると規定したが、こうしたニヒリズムを突き詰めると「戦争において重要なのは正義ではなく勝利である」というヒトラーの論理に行き着く。
しかし日本には、よくも悪くもキリスト教のような普遍主義は一度も根づかなかった。その代用品として戦前には天皇が使われたが、それは福田恆存も指摘したように、個人を救済するエートスをもたなかったため、敗戦とともに簡単に捨てられた。
戦後は新たな代用品として絶対平和主義が使われたが、これは天皇よりリアリティのない空想だった。社会主義も人々を内面的に救済するエートスをもたないため、一度も多数派になることのないまま消えてしまった。
しかし亜流リベラルはまだそれに気づかず、民主主義のクラートスを「動機の純粋性」のエートスで語る。集団的自衛権を認める安倍首相は「戦争を求める汚れた政治家」であり、それを阻止する朝日新聞は「平和を求める純粋な心」をもっている――これは丸山も後年に批判した「プリミティブな心情倫理」だが、それを捨てると戦後リベラルには何も残らないのだ。
本書の原型は1952年に出版された小冊子だが、丸山はこれを絶版にし、論文集にも収録しなかった(今年、文庫で復刊)。その理由を彼は「デモクラシーを支える自発的結社のモデルとして労働組合を考えていた」と語り、「これは完全に間違いだった」と率直に認めている。
本書に収録された「権力と道徳」という論文で、丸山は民主主義というクラートス(支配)を支えるエートス(倫理)が日本にあるのかという問題を追究している。西洋では個人を救済するキリスト教のエートスを基礎にして、近代国家のクラートスが築かれた。ローマ教会は俗権と妥協して御用宗教となったが、プロテスタントはパウロ的な普遍主義を掲げて国家=教会と戦った。
この矛盾が集約的にあらわれたのがドイツだった。ヘーゲルは国家理性が宗教の矛盾を統一すると考えたが、ニーチェは国家を「組織された非道徳性」と嘲笑した。ウェーバーはニーチェの影響を受け、国家は暴力装置であると規定したが、こうしたニヒリズムを突き詰めると「戦争において重要なのは正義ではなく勝利である」というヒトラーの論理に行き着く。
しかし日本には、よくも悪くもキリスト教のような普遍主義は一度も根づかなかった。その代用品として戦前には天皇が使われたが、それは福田恆存も指摘したように、個人を救済するエートスをもたなかったため、敗戦とともに簡単に捨てられた。
戦後は新たな代用品として絶対平和主義が使われたが、これは天皇よりリアリティのない空想だった。社会主義も人々を内面的に救済するエートスをもたないため、一度も多数派になることのないまま消えてしまった。
しかし亜流リベラルはまだそれに気づかず、民主主義のクラートスを「動機の純粋性」のエートスで語る。集団的自衛権を認める安倍首相は「戦争を求める汚れた政治家」であり、それを阻止する朝日新聞は「平和を求める純粋な心」をもっている――これは丸山も後年に批判した「プリミティブな心情倫理」だが、それを捨てると戦後リベラルには何も残らないのだ。
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