歴史観の問題は大事なので、補足しておこう。本書は「右派」の代表として有名な黒田勝弘氏(元産経ソウル支局長)と、今週解任された市川速水報道局長(元朝日ソウル支局長)の2006年の対談だが、意外なことに意見はほとんど一致している。
黒田氏は慰安婦問題は「虚構だ」といい、市川氏もそれに同意している。それだけではない。2人とも「韓国に対する償いが足りない」という点で一致しているのだ。
そして彼らは日本の志願兵として戦場におもむき、靖国神社にまつられている2万2000人の戦没者をなかったことにし、日本軍に奉仕した慰安婦を「強制連行」ということにした。それは無理もないし、こういうねじれた歴史をつくった責任は日本にある。
その意味で黒田氏もいうように、架空の歴史にもとづく糾弾と謝罪ではなく、歴史的事実にもとづく感謝と慰労が必要だ。日本政府が朝鮮人志願兵や軍属に対する謝意を表明し、一定の「慰労金」を出すこともありうる。父の記憶をひきずる朴政権では無理だが、次の世代には本当の和解が可能になるかも知れない。
黒田氏は慰安婦問題は「虚構だ」といい、市川氏もそれに同意している。それだけではない。2人とも「韓国に対する償いが足りない」という点で一致しているのだ。
黒田 戦争の被害者、日本軍に徴兵された人や軍属など、旧統治時代に日本軍人として苦労していただいた人には、日本は国家の誠意として何かをしてあげるべきだと思ってます。65年協定ですべての対日請求権は国際法的には終わってる。[…]でも日本国家の誠意として、旧日本国民に対する恩恵、誠意、あるいは慰労といった措置をとったらどうか。これが日韓の「歴史問題」の本質である。華夷秩序の中では朝鮮より下にあった日本が、近代に自分たちを抜いて支配したという事実を認めたくない。経済的には負けても、道徳的に優位に立ちたい――そういう潜在意識が、架空の抗日戦争を生み出したのだ。
市川 軍人・軍属が韓国で解放後、声を上げられないのは、日本への協力者とみなされ、糾弾されるおそれがあるから。日本的なもの、日本に協力してきたもの、それを見て見ぬふりをするか、沈黙を守り続けるか、汚れた歴史とするか、そういうふうに戦後の韓国が自分たちの歴史をあくまで表面的に、誤謬のない歴史観としてしまったのは問題です。(p.48以降)
そして彼らは日本の志願兵として戦場におもむき、靖国神社にまつられている2万2000人の戦没者をなかったことにし、日本軍に奉仕した慰安婦を「強制連行」ということにした。それは無理もないし、こういうねじれた歴史をつくった責任は日本にある。
その意味で黒田氏もいうように、架空の歴史にもとづく糾弾と謝罪ではなく、歴史的事実にもとづく感謝と慰労が必要だ。日本政府が朝鮮人志願兵や軍属に対する謝意を表明し、一定の「慰労金」を出すこともありうる。父の記憶をひきずる朴政権では無理だが、次の世代には本当の和解が可能になるかも知れない。