きょうの小保方氏の記者会見は2時間半もあったが、弁護士の手続き論と彼女のお涙ちょうだいの話ばかりで、新事実はほとんどなかった。特にわからないのは、ニューズウィークにも書いたように、彼女が「200回も成功した」というSTAP細胞の実験が第三者によって再現できないのはなぜかという点だ。
ところが記者団がそれを追及しない。「今のお気持ちは」とか「理研をうらんでいないか」という類のワイドショー的な質問ばかりで、事実を解明する気がない。200回も成功したというのだから自家蛍光のような単純なノイズではなく、かなり系統的に間違っている可能性がある。考えられるのは 
  1. ES細胞が混入していた
  2. 体内の未分化な細胞を誤認した
  3. STAP細胞はできなかったが、できたと発表した
の3つだが、このうち質問で出たのは1だけで、彼女は「研究室ではES細胞の培養はしていなかった。混入は起こりえない」と答えたが、それではなぜ彼女以外の人に再現できないのか、まともに説明できなかった。2は誰も質問しなかったので、残る可能性は3である。

きょうの印象では、彼女がSTAP細胞の存在を信じていることは間違いない。その心証を与えることが目的だとすれば成功だが、もっと悪質ともいえる。最初から嘘なら本人にも罪の意識があるので、誰かがおかしいと気づくだろう。しかし本人がまったく別のものを新発見と信じていると、どこで間違えたのか追体験しないと決着がつかない。

そんな再現性のない話を、笹井氏を初めとする専門家がどうしてチェックできなかったのだろうか? 彼らの書いた手順書でさえ、決定的な証拠であるはずのTCR再構成がみられない。小保方氏はテラトーマの「真正な写真」があると主張しているが、ES細胞からも同じような多能性細胞はできる。TCR再構成を証明するのが電気泳動だが、これは普通のT細胞でも出る。

つまりTCR再構成の起こった多能性細胞がES細胞由来ではないことを示さないと、実験の成功は証明できないのだが、実験ノートが不備なので困難だ。理研の手順書から考えると、彼女がTCR再構成のデータを見誤った可能性もある。200回もできたのなら、201回目を公開でやればいい。それがいちばん簡単な解決策である。