共著者が論文の取り下げを求めたことで、先週のメルマガで書いたSTAP細胞の疑問は確認されたようだ。もちろん私はこの分野の専門家ではなく、まとめサイトもあるので、くわしいことを知りたい人はそっちを読んでください。ここでは素人むけに、疑問点を書いておく。
最初に海外のサイトで指摘されたのは次の画像で、Nature論文の図1b(STAP細胞)と図2g(まったく別の細胞)に同一の写真が使われている。これは共著者の若山照彦氏も認め、「同じ写真を取り違えて2度使った」と説明したが、他の部分の形は違うのに胎盤だけ同じなのは不自然で、写真を加工した疑いが強い。



もう一つはっきりしているのは論文の丸ごと盗用である。これは17行にわたって2005年のドイツの学会誌の論文と同一の文が続くもので、実験データまですべて同じなのはデータが嘘であることを示唆している。

もっと深刻なのは、この実験が再現できないことだ。Knoepflerのブログによると、理研の出したEssential technical tipsでも、再現性がないことを認めている。
Of eight clones examined, none contained the rearranged TCR allele, suggesting the possibility of negative cell-type-dependent bias (including maturation of the cell of origin) for STAP cells to give rise to STAP stem cells in the conversion process.
つまり8個のクローンにはTCR(T細胞受容体)の組み替えが見られなかったというが、理研のプレスリリースにはこう書かれている。
リンパ球のうちT細胞は、いったん分化するとT細胞受容体遺伝子に特徴的な組み替えが起こります。これを検出することで、細胞がT細胞に分化したことがあるかどうかが分かります。この解析から、Oct4陽性細胞[STAP細胞]は、分化したT細胞から酸性溶液処理により生み出されたことが判明しました。
Nature論文ではSTAP細胞の決定的な証拠とされたTCRの組み替え(もとが分化したT細胞だった証拠)がなかったというのだ。テクニカルには、これはクローンのSTAP幹細胞で見つからなかっただけで、もとの(受精卵に移植する前の)STAP細胞にはあった可能性があるようだが、Nature論文の根幹が理研の追試で否定されたことになる。

これだけ疑問があると、若山氏が論文を撤回しようというのは当然だろう。論理的には、もとが分化したT細胞ではなくても多能性は否定されていないが、これもその証拠写真が改竄されたとすると、助からない。

私はまったく素人なので、以上の話は憶測にすぎないが、素人にも欠陥が明らかなほど稚拙なデータの改竄が行なわれたということだ。写真の偽造と論文の丸ごとコピーだけでも、Nature論文を撤回する理由になるだろう。