きのうから変なコメントがくるなと思っていたら、毎日新聞が1面で「テレビがなくても全世帯から受信料を徴収する義務化」という誤報をしていることがわかった。
この記者は受信料制度を理解していない。執行部が出したという文書がないので確認できないが、この記事によれば「NHK執行部は8月、「今後の方向性」として放送法を改正して支払い義務化を明記した回答文書を経営委に提出」したと書いており、どこにも「テレビがなくても」とは書いてない。

放送法64条では、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と書いている。つまり受信契約の義務はあるが、支払い義務も罰則もないのだ。

支払い義務化は今まで何度も検討されたが、ここをへたにいじると「罰則を設けるならペイテレビにしろ」という話になりかねないので、変えなかった。今回の執行部の案は、この支払い義務と罰則を受信機を設置した全世帯に課そうというものだろう。受信機のない世帯から受信料を取るのは、それこそ放送法違反である。

私はテレビを見ている全世帯に支払いを義務づけ、NHKはペイテレビにすべきだと思う。ネット配信も同じだ。見ているかいないかはB-CASカードで識別できる(もともとそのために導入されたものだ)。払わない世帯にはスクランブルをかければいいので、罰則はいらない。

この記事は「義務化は、第1次安倍晋三政権で2006年に総務相に就任した現官房長官の菅義偉氏が強く求めた」と書いているが、これは支払い義務化だ。この記者は、受信契約義務と支払い義務の違いを理解していない。毎日新聞は訂正と謝罪の記事を出すべきだ。

追記:毎日の記事は意味不明だが、経営委員会が見直しを求めたのは、BBCのようにテレビの受信料とネットを一体化して罰則を設けることだったと思う(そういう案は昔からある)。しかしNHKオンデマンドは独立採算(受信料は取れない)なので、一体化するためには大幅な制度改正が必要。それはNHKの経営問題ではなく総務省の政策なので、執行部は「?」とつけたのだろう。

追記2:会長が否定して、誤報サイトにも出た。総務省もコメントしているように、無条件に全世帯から受信料を取ることは過去も現在も検討していない。付け加えると「テレビのない世帯」でもワンセグやテレビチューナーなどの「受信機」のある世帯には、今でも受信契約は義務づけられている。NHKオンデマンドの利用者に受信契約を義務づけることは、上の理由で不可能。