きょうの日経新聞の「経済教室」に、安念潤司氏(中央大学教授)が東電の法的責任について書いている。きわめて常識的な内容だが、この程度のことも理解しないで騒いでいる県知事や「空気」を恐れる閣僚がいるので、あえて長文だが引用しておく。
本来、運転中の原子炉を停止させるためには、当局が原子炉等規制法に基づいて運転の停止を命令するか、あるいは原子炉設置許可を取り消すかしなければならない。だが現状では、こうした処分を受けた原子炉は存在しない。電力各社には、原発の運転を停止していなければならない法律上の義務はないのである。

また、検査終了後に当局が交付する検査終了証は単に事実を証明する文書にすぎず、運転の停止義務を解除するような法的効果があるわけではない。したがって、電力会社は定検のうち原子炉を停止させる以外実施しようのないプロセスが終了すれば、法令上は運転再開できるのである

もっとも、本年7月8日「新規制基準」が施行された結果、各電力会社はこれに適合すべく、原子炉関連の機器の新増設などの措置をとらなければならなくなった。[・・・]しかし、これらの許認可申請のために、電力会社は原子炉の運転を停止する法令上の義務を負うわけではない。許認可手続きと原子炉の運転は並行して行えるのである。
また損害賠償についても、原賠法の第3条但し書きが適用されないという判断は正式には出ておらず、裁判所の判断をまたなければならない。可能なら、今からでも但し書きを適用して国家賠償に切り替え、東電が国に対する債務を長期間かけて返済する方式に切り替えるべきだ。そうしないと、汚染水問題にみられるように東電の資金繰りに制約されて機動的な対策がとれず、除染のような「たかり」が横行する。

「アベノミクス」効果で、一時的に成長率が年率3%を超えたが、これから産業用の電気料金が2割以上あがると、その効果も帳消しになり、「原発不況」に陥るおそれもある。安倍首相は法にもとづき、定期検査を終えた原発の再稼働を命じるべきだ。