NHKの日曜討論で、浜田宏一氏が「量的緩和はきいた。野口氏の話は時代遅れだ」と主張したことが話題を呼んでいる。時代遅れはどっちだろうか(テクニカル)。
野口「先程触れましたように、過去のデータを見る限り、金融政策が効果がなかったことははっきり出ています。2001-2006年の量的緩和政策が行われましたが、経済には何の影響も及ぼさなかった」

浜田「株式、そして土地の資産価値が今後上がってくれば、担保が増えて貸出市場にも極めて強く効く、というのが今の連銀議長でまた立派な経済学者でもあるバーナンキ先生が言っていることです。野口先生がおっしゃるのは今の経済学から見ると時代遅れだということですね」

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上の図は、現代の金融経済学界でもっとも影響力のあるWoodfordの論文に出ている日銀の量的緩和についてのデータだが、彼はこれを見せて次のように結論する。
As shown in Figure 14, the increased supply of bank reserves raised the total monetary base by 60 percent over the first two years of the policy, and eventually by nearly 75 percent. Yet there was no corresponding increase in aggregate nominal expenditure: nominal GDP was only six percent higher after five years of QE than it had been in the first quarter of 2001, despite a massive increase in the monetary base. And as the figure also shows, deflation (here measured by the GDP deflator) continued unabated.
ゼロ金利では、量的緩和はリスク資産の購入を含めて効果がない、というのが彼のサーベイしている多くの研究の一致した結論である。

では高橋洋一氏のいうように、量的緩和で円安になったのか。これも先日の記事で紹介したソロス・チャートを見ればわかるように、むしろ量的緩和の始まった2002年以降に大幅な円高になっている。なぜだろうか?


それは為替トレーダーがよく使う長期金利の差を見ればわかる。上の図のように2002年から日米の金利差は急速に縮まり、ほぼそれに沿ってドルが下がっている。ITバブル崩壊後のFRBの金融緩和でアメリカの金利が下がり、ゼロ金利の日本で借りて金利の高いアメリカで投資する円キャリートレードが減ったからだ。

むしろ2006年の量的緩和の解除後に「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる日本の個人投資家が大量にキャリートレードに参入し、「円安バブル」が発生した。これによって1兆ドルともいわれる資金がアメリカに流れ込み、住宅バブルを加速した。結果的には2008年以降、大幅なドル安になり、ミセス・ワタナベは大損した。

要するに量的緩和は国内的にも国際的にも効果がなかったというのが、Woodfordの最新データによる総括である。浜田氏の信じているゾンビ経済学とは違い、金融市場を動かすのは通貨供給ではなく金利なのだ。時代遅れなのは、いつまでも日銀が経済を自由自在にコントロールできると思い込んでいる浜田氏のほうである。