私の訴状を閲覧した人々が、いろいろ細かい分析をしているようだ。われわれの代理人にも参考になるので、紹介しておこう(テクニカル)。

上杉wikiは、櫻井よしこ氏との対談で上杉が話したことと訴状が矛盾していると指摘している。上杉はこう主張している。
原情報は各国大使館のリストなんですよ、記事ではなくて。まず海外メディアがそのリストを作成したのを翻訳する人たちが、匿名の人たちがいて、そのネット上に落ちていたものを、私の情報提供者、この方は細かくはこれ言えませんけど、政府・外交関係者の方がまとめたものをお互い使ったということが確認とれました。
ここで彼は、ネット上の情報を「政府・外交関係者」がまとめたリストを読売と上杉が「お互い使った」と主張している。これは10月15日の事務所の告知と同じである。
盗用したとされている3月19日の読売新聞朝刊に掲載された「海外避難リスト」につきましては、 同じリスト(同型)を上杉は少なくとも発売前までに情報提供者より入手したことが確認できました 。今回、その点を、情報提供者との双方間、および別の関係者、また電磁記録によって確認しております。
つまり問題のリストを「読売の記事より前に入手した」と繰り返し主張している。ところが訴状では、こう主張しているのだ。
読売記事が出口リストより時間的に先行している。したがって、読売記事は出口リストを盗用したとか、読売記事が掲載されるまでに原告は出口リストを入手していたという主張は成立しない(原告もこのような主張をするものではない)。
この二つの主張は、明らかに矛盾している。事務所の告知では「発売前までに情報提供者より入手した」と書いているのに、訴状では「読売記事が掲載されるまでに原告は出口リストを入手していない」とみずから認めているのだ。いったいどっちが本当なのか。読売新聞は第三者の取材に対して、こう答えている。
私が「データがオリジナルである事は間違いありませんか?情報提供者がいたのではありませんか?」と質問すると、読売は「もし、情報提供者がいて、それで記事やデータを作れば、その旨は必ず文末に明記します。何も(表に)説明がなければ、それは読売社内で作成したものに間違いありません」と答えてくれました。
そこで私は10月20日の記事で「上杉隆氏のいう『情報提供者』は存在しない」と書いた。これはまさに訴状が認めている事実だ。上杉に読売から盗用したリストを提供したのは「政府・外交関係者」でもない、ただの前科者である。

上杉の代理人(長谷川幸雄)は事実関係を理解していないようだが、私が書いたのは、読売より前にオリジナルの情報を作成して読売に提供した人物が存在しないという意味である。上杉の記事が著作権侵害にならないのは、その場合に限られ、上杉も当初はそう主張していたからだ。出口のリストが読売より後に作成されたことを認めた段階で、彼の主張は崩れているのだ。

残る可能性は、出口がオリジナルに作成したリストが、読売の記事と偶然に一言一句まで一致したと主張することしかないが、そんな荒唐無稽な話は裁判所が認めないだろう。したがって原告は「出口が無断複製したことを上杉は知らなかった」と主張するしかないが、これが事実なら上杉の記事は明白な著作権侵害である。きのうの記事でも説明したように、たとえ彼が善意の第三者であっても著作権侵害=盗用になるのだ。

追記:上杉が意図的に盗用していた証拠がある。これについては、あらためて書く。