NHNとアゴラ研究所と私に対する上杉隆の名誉毀損訴訟の訴状は東京地裁で閲覧できるが、これをもとに海賊版が出回っているので、正確な内容を要点だけ書いておく。

訴状で明らかになった新事実は、この海賊版に書かれている通り「D氏」が出口晴三なる人物だった(と上杉は主張している)という点だけである。彼は葛飾区長だったが、1993年に選挙違反で逮捕され、失職した。彼の娘の電子メールと称するものが証拠として添付されているが、その時刻は2011年3月19日の11時5分である。これに対して、読売オンラインの記事が公開されたのは、同じ日の8時17分だから、読売が出口の情報をコピーすることはありえない(これは訴状も認めている)。

この電子メールで送られたリストと読売の記事は「同一である」と訴状は認めているので、問題は読売と同一のテキストを出口がどうやって書いたかである。これについて訴状では「自分を中心に息子や身内と協力して情報集約・分析を行なっている」と書いてあるだけだが、出口の「情報集約」の結果が偶然、読売の記事と全角スペースまで一致したのだろうか。

訴状はこの点についての説明を避けているが、これは出口を証人尋問すればわかることだ。彼が読売の記事を無断複製して上杉に送ったことは明白である。そのリストを上杉は著書で「著者調べ」として使い、2011年9月22日のダイヤモンド・オンライン記事でも自分の調査結果のように見せかけ、多くの人が「読売の記事の無断引用ではないか」と指摘しても認めなかった。

上杉の唯一の主張は「出口が無断複製したとしても私は知らなかった」という点だが、著作権侵害に故意の立証は必要ない。たとえば判例解説では、こう書いている:
差止請求(112条1項)とは、権利を侵害する者や侵害するおそれのある者に対して、侵害行為の停止や予防を請求できる権利です。侵害者に著作権侵害についての故意または過失の要件は不要であるため、善意無過失の者に対しても差止め請求が可能です。
たとえ上杉が出口の無断複製を知らなかったとしても、著作権侵害=盗用の事実は明白である。

以上が争点のすべてであり、まるで上杉の著作権法違反を立証する訴状のようだ。これを読んだ法律関係者がみんな不可解に思うのは、上杉がこのように詳細に自分の違法行為を立証する意図は何かということだ。私が複数の大手出版社の編集者から聞いた話では、「上杉はトラブルが多いので仕事を発注するな」という申し合わせができているという。これに対して「盗用問題は係争中だ」と言い逃れして時間稼ぎするために訴訟を起こしたものと思われる。

特に大きいのは、まぐまぐに「著作権法に違反した場合は配信停止」という規定があり、大川社長が「当社の弁護士に調査させる」と明言したことだ。上杉はメルマガで月収100万円程度(推定)を得ており、配信停止は何としても避けたいのだろう。しかし上のように、上杉の著作権侵害は明らかである。訴訟の終了を待たず、まぐまぐは上杉のメルマガを配信停止すべきだ。